いまどきの学校<23>おもてなし 交流ノウハウ積み重ね

 福岡県飯塚市立庄内中吹奏楽部によるアメリカ国歌「星条旗」の演奏。米国からの生徒14人は全員直立し、胸に手を当てた。市が友好都市の米国サニーベール市と続ける中高生の相互派遣事業は3年目。16日にあった今年の訪問団の歓迎式典は、これまでで最も華やかに幕を開けた。

 演奏は「さくらさくら」「アイドルメドレー」と続き、部員によるダンスなども披露された。「米国側保護者にもインターネットで動画が共有され、感動の声が相次いだ」。飯塚市教育委員会学校教育課指導主事の蘭幸子さん(58)は盛り上がった様子を振り返る。

 庄内中では翌日から米国生徒6人を受け入れた。初日の歓迎会は主に英語で行われ、同中生徒会長のあいさつも英語。生徒たちも「フォロー・ミー(付いてきて)」などと自然に会話をしていた。

 同中は毎月、九州工業大の留学生と交流しているほか、国際協力機構(JICA)と連携して開発途上国から教師などを受け入れており、年間約50人の外国人が来校するという。「生徒たちは日ごろから外国人と接する機会が多く、相手の言葉を完全には理解できなかったり、すべてを伝えられなかったりしても、英語を使うことに抵抗が少ない」と英語教諭の長村裕さん(35)は語る。

 ホームステイ先のホストファミリーも来日前からインターネットでやりとりを重ね、工夫をこらして歓待。事前に準備した制服を着て登校してもらったり、温泉に興味があっても浴場で裸になるのに抵抗がある生徒のため、水着で入浴ができる温泉を探して大分県別府市まで出かけたりした。

 「せっかく飯塚に来たのだから、飯塚でしかできない体験を」と計画された流鏑馬(やぶさめ)の見学、田植えなどは雨で中止になったものの、長村教諭は「地域の協力を得ることで、外国人にさらに満足してもらえるという可能性を感じた」と振り返る。

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 今回サニーベール市の生徒を受け入れたのは庄内中のほか、二瀬中と小中一貫校頴田校、嘉穂高・付属中の計4校。昨年の7校(8人)から受け入れ校の数は減ったものの、日本流の中高一貫教育の体験や外部講師による水墨画の指導など、各校が独自の取り組みを進めた。蘭さんは「各校一人ずつよりも、まとまった人数で行動する方が米側が安心するし、学校側も充実したもてなしができる」と説明する。

 出発前日に麻生本家で開かれたお別れパーティーでは、ホストとして寝食を共にした中高生と米生徒とが席を囲んで食事や会話を楽しむ光景が広がった。昨年までと比べても滞在期間中により深い交流が行われたという印象だ。

 ただ、週末をまたいだこともあり、今回の訪問で飯塚の学校生活を体験できたのは2日半に限られた。良好な関係を築いてきた両市は現在、友好都市という間柄を姉妹都市に「格上げ」する手続きを進めており、来年以降は滞在日程を延ばすことも検討しているという。

 飯塚市は2020年の東京五輪・パラリンピックで南アフリカと交流を深める「ホストタウン」に登録され、同国車いすテニスチームの事前キャンプ誘致を目指す。日米の交流で磨かれた中高生たちは、4年後にも「おもてなし」の最前線で活躍してくれるはずだ。

この記事は2016年06月28日付で、内容は当時のものです。

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