NASAからネット授業 「宇宙ごみ」テーマに英語で 「スーパー・サイエンス」指定の福岡市城南高

「宇宙ごみ」をテーマに、NASAとインターネット回線で結んだ特別授業。画面の向こうの研究者に、生徒たちは英語で質問した=福岡市の城南高校 拡大

「宇宙ごみ」をテーマに、NASAとインターネット回線で結んだ特別授業。画面の向こうの研究者に、生徒たちは英語で質問した=福岡市の城南高校

 米航空宇宙局(NASA)とインターネット回線で結び、「宇宙ごみ」について学ぶ特別授業が18日、福岡県立城南高校(福岡市城南区)であった。グローバル化の時代に対応した研究者・技術者の育成を目指す、スーパー・サイエンス・ハイスクール(SSH)としての取り組み。3年生を中心に約140人が受講。第一線の研究者から英語で授業を受け、質疑応答も英語でこなした。

 宇宙ごみ(スペースデブリ)は近年増え続け、秒速7~8キロの猛スピードで地球を回り続けている。通信や放送、衛星利用測位システム(GPS)など、日常生活を支える人工衛星との衝突が、いつ起きてもおかしくない状況にある。

 この日、講師を務めたのはNASAジョンソン宇宙センターの主任研究員。「地球周辺の宇宙には、ソフトボール大以上のごみだけで、2万2千個以上が飛び回っていると推計される」。2007年の中国の弾道ミサイルによる衛星破壊実験や、09年の米国とロシアの衛星衝突により、数千個単位で急増したデータをグラフで示した。

 「宇宙船地球号」という言葉を思い起こす。地球という運命共同体。宇宙空間には上下も左右もなく、そこから見える地球に国境もない。生徒たちが暮らす地域にごみ問題があるように、宇宙にもごみ問題は存在するのだ。

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 「地磁気に影響を及ぼす太陽の活動が最近、活発化しているが、宇宙ごみへの影響は?」

 英文の資料に沿い、約1時間の講義を受けた後、こう英語で質問をしたのは田中日菜子さん(3年)。「普段、宇宙のことなんて考えないですからね。すごく視野が広がった」。予習をして、英語で質問を考え、授業に臨んだ。

 陶山(すやま)茜さん(同)の質問は「宇宙ごみの中には、有効な資源も含まれているはず。回収、再利用はできないだろうか」。家電製品などに使われる貴金属やレアメタル(希少金属)を再生可能な資源として、都市の中の鉱山に見立てる「都市鉱山」。その発想を宇宙にも広げた。

 講師の回答は「今の技術やコストを考えると困難」。だからこそ今後挑戦すべき研究テーマなのだ。女子生徒2人は理系クラスで、デザイン、都市設計の道に進みたいという。

 男子生徒からはこんな質問もあり、講師も苦笑い。「NASAって、映画みたいにカッコいい世界ですか?」「宇宙人に会ったら、どうしますか」。授業には「脱線」も必要だが、リケジョ(理系女子)に負けるな-。

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 城南高校がSSHの指定を受けたのは3年前。環境や持続可能(サスティナビリティー)な社会システムなどを主テーマに、生徒自らが課題を設定し、探求する「問題解決型学習」に取り組んでいる。

 環境問題ではこれまで、大学の研究室の指導も受け、新たな指標に基づく川の水質などについて調査研究してきた。「宇宙ごみ」の授業は、視点をさらに広げる狙いがあった。

 指導に当たる田中志保教諭は物理が専門で、「最近の生徒は、仲間内でよく雑談し、そこから面白いアイデア提案もあるのだが、みんなの前で発言、主張するのが苦手。目指すは、話せるサイエンティスト(科学者)」。生徒たちのコミュニケーション力、プレゼンテーション(発表・提示)力の育成にも力を入れる。

 受験優先の高校カリキュラムに、SSHの課外授業をどう盛り込むのか、悩ましい面もあるが、学校独自のSSHの取り組みは、大学推薦入試でのアピールポイントにもなり、「学校の個性化」にもつながっているようだった。

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【ワードBOX】スーパー・サイエンス・ハイスクール

 科学技術分野で世界を舞台に活躍できる人材の育成を目指し、文部科学省が2002年度から始めた。公募制で、指定を受けた高校は5年間、研究テーマやカリキュラムを決めて活動する。1校当たり年間900万~1600万円が事業費として助成される。九州では本年度、東筑高校(北九州市)、長崎南高校(長崎県)、宇土中・高校(熊本県)が新たに指定を受けた。九州では20校、全国では201校が指定を受けて活動している。

=2013/07/23付 西日本新聞朝刊=

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