いまどきの学校<18>民間受け皿 不登校生信じ変化待つ

 砂漠に湧き出す泉のように、迷える子どもたちのよりどころになれないか。飯塚市のボランティア団体「子育てオアシス」は2001年から、不登校に悩む中学生の支援を続けている。

 現在の生徒数は嘉飯地区の3人。同市鯰田の「つどいの広場いいづか」の教室では、市内の3年男子(14)がマンツーマンで英語の授業を受けていた。オアシスに通うようになってほぼ1年。約175センチの体格からは想像がつかないが、当初は大人2人が支えなければ歩けないほど、気力と体力を失っていた。

 今も治療のため病院に通うが「先生が話を聞いてくれるし、授業への参加も自由。家族とけんかをすることも減った。将来は自衛隊員になって親孝行したい」。照れながらも自身の変化を語った。

 オアシスでは元教師や主婦など約20人が顧問やサポーターとして各教科の指導や組織の運営に当たる。生徒本人が事前に視察して通うかどうかを決める。時間割も設けるが、まずは事務室横の部屋で自由に過ごしてもらい、授業への参加を促すことはない。

 「生徒にとって家を出ただけで大きな決断。周囲の期待が高まりすぎると、今度は裏切ることに重圧を感じてしまう。生徒を『認める』『褒める』『待つ』ことが大切で、その中でこの『待つ』が一番難しい」とオアシスの藤江文雄代表(77)は強調する。長短はあっても「今日は教室に出てみよう」と口にする時が必ず訪れ、他の生徒との交流も自然と生まれるという。

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 県の学校基本調査によると、県内の2014年度の不登校による30日以上の長期欠席者数は小学生1006人(1993年度は285人)で全児童の0・37%(同0・08%)。中学生になると、14年度が4217人(同1885人)で全生徒の2・97%(同0・9%)を占めるなど数、割合ともに大きく増加する。

 「学校でのいじめやトラブルだけでなく、家庭での虐待や貧困など増加の背景には複雑化する社会環境もある」と藤江代表。中学教諭や校長、飯塚市教育長を務めた経験から、教育現場と行政の努力だけでは不登校問題を解決できないと感じ、オアシスの開設に踏み出した。

 特長は教育委員会や各中学校との連携。オアシスへの参加が学校の出席扱いになるだけでなく、中間・期末考査についても同級生と同じテストを受けることができる。女子生徒5人が“卒業”した3月13日の旅立ち式には、飯塚市の片峯誠教育長のほか各中学の校長も参加し、卒業証書を手渡した。

 これまでに通った約110人のうち約60人がオアシスで旅立ち式を迎えた。ほとんどが一般受験で高校に進んでおり、教育大で教職を目指す人もいるという。

 藤江代表は「公教育が子どもを排することはできないが、豊かな社会を目指すにはさらなるセーフティーネットが必要。行き場を失った中学生に希望を与え、学校がいつか戻れる場所になるように、オアシスの活動を続けたい」と意欲を見せる。

この記事は2016年05月17日付で、内容は当時のものです。

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