良縁呼ぶ絶景の神社 西区 愛宕神社周辺 16種のおみくじも魅力 福岡県

男坂と呼ばれる198段の階段。振り返ると鳥居が小さく見える 拡大

男坂と呼ばれる198段の階段。振り返ると鳥居が小さく見える

海抜68㍍の高さからは博多湾やマリナタウン、福岡タワーが一望できる 「こどもおみくじ」や「恋みくじ」など、16種類の多彩なおみくじも魅力だ さくっとした生地と甘さを抑えたあんが特徴の「いわい餅」

 全国にある愛宕神社の中で、東京、京都と並ぶ「日本三大愛宕」の一つとされる福岡市西区の愛宕神社。小高い愛宕山の上から博多湾や福岡タワーを一望できる市内有数の絶景スポットで、近年では縁結びの神様としても有名だ。訪ね歩くと、思い思いに「縁」を求める人たちの姿があった。

 福岡市営地下鉄室見駅から明治通りを西へ歩くこと5分。バス停「愛宕神社前」のまさに目の前に愛宕神社参道入り口の鳥居が立っていた。息を切らしつつ198段の石段が連なる通称「男坂」を登り切る。さらに87段の石段を駆け上がり、たどり着いた本殿は神々しい雰囲気が漂っていた。

 2千年近い歴史を誇る愛宕神社は、福岡で最も古い神社とされる。神話に登場する伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と伊弉冉尊(いざなみのみこと)の夫婦神をはじめとする4柱の御祭神を祭っていることから、縁結びの神様として知られている。ほかに厄除開運、商売繁盛、安産成就、交通安全…あらゆる願い事をかなえ、禁酒、禁煙などの御利益もあるとして広く崇敬を集めてきた。

 海抜68メートルの高さから望む景色は絶景で、能古島や志賀島までくっきりと見えた。その美しさからか、映画「はなちゃんのみそ汁」のロケ地にもなった。「福岡の見どころをまとめて見られる場所」。そう語るのは、専門学校教員の谷智泉さん(46)。「住んでいる地域や土地のことを知ってほしくて」と教え子17人を引率して参拝に来た。学生たちは笑顔で記念撮影にいそしんでいた。

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 16種類あるおみくじも名物の一つ。タイの形をした赤と金色の「目出鯛(めでたい)みくじ」や「こどもおみくじ」などが境内に並ぶ。

 夕暮れ近く、おみくじ箱の前に市内の専門学校に通う男子学生3人の姿が。8月に交際を始めた女性とわずか1カ月で別れたという金城亘佑さん(18)を励まそうと、菅原悠貴さん(21)が連れてきたという。

 金城さんは「買い物帰りに何も言わずに神社方向に車を走らせてくれた。おみくじ代までおごってくれて、優しいっすよ」と菅原さんに感謝しきり。「落ち込んでいる姿を見ていられなかった」と菅原さん。金城さんが引いた「恋みくじ」の結果は「大吉」。「待ち合わせ、必ず来る」-。まだ見ぬ恋人に期待を膨らませ、金城さんは拳を強く握った。

 縁結びの神様と知らず、自然と足を向ける人もいた。会社員江山和隆さん(38)と美恵子さん(35)夫婦は、生後8カ月の双子の葉一くんと一華ちゃんを抱いて徒歩で登ってきた。和隆さんは「ずっと気になっていた場所だった。子ども2人の健やかな成長を願いました」。縁結びの神様と聞いて、美恵子さんは「もっと仲良くなれたらいいね」と和隆さんを見つめてにっこり。結婚生活8年という2人。この良縁にますます磨きが掛かりそうだ。

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 参拝を終え、小腹がすいたときにお薦めなのが、神社近くに構える1689年創業の老舗「岩井屋」のいわい餅だ。じっくり仕込んだ甘さ控えめのあんを、九州産もち米の皮で包む。外はサクッ、中はモチモチの食感を楽しめる。

 21代目の篠崎成陽さん(30)は「参拝を終えた人にほっとしてもらい、幸せな気分で帰ってもらうのが使命なんです」と力を込める。同じくあんをもち米で包んだあたご餅を販売する向かいの「びんつけ屋」と切磋琢磨(せっさたくま)し、より良いおもてなしを目指しているという。

 一方、外国人や全国からの観光客が増える中、「参拝の文化がうまく継承できていない」と篠崎さんは懸念する。「神社でお願いした後、どうなったかを必ず報告しに来なさいと昔から教えられてきた。お願いしっぱなしではだめですよ」とチクリ。きちっと礼儀を尽くした人にこそ、良縁が訪れるということなのだろう。

 ■歴史

 ●九州初ロープウエー 戦争で供出、姿消す

 愛宕神社のすぐ近くで、戦時中まで運行されていた九州初のロープウエーをご存じだろうか。現在ではその痕跡もなく、岩井屋付近に案内板が残っているだけだが、当時は珍しさからか多くの参拝者や観光客でにぎわっていたという。

 神社によると、ロープウエーは1928年に地元有志らが創業。8人乗りの箱形車両2台が、愛宕山と現在の明治通り付近を往復していた。約100メートルを片道約2分で運行していたという。ところが、太平洋戦争で従業員は徴兵され、ロープやワイヤ、車体なども供出しなければならなくなり、43年に姿を消した。

 愛宕神社にウオーキングに来ていた販売員女性(25)は「初めて聞いた。ロープウエーに乗った人にとって、思い出の場所が戦争のために消えたと想像すると悲しい」と語った。

この記事は2016年10月01日付で、内容は当時のものです。

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