九州の「限界集落」3025に増加 542集落が消滅危機

 65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める「限界集落」は、九州7県では2015年4月時点で3205に上り、10年度の前回調査より1100以上増えたことが21日、国土交通省と総務省の調査で分かった。深刻な過疎や高齢化に伴い、九州の計542集落について、市町村が「10年以内」または「いずれ」消滅する可能性を懸念していることも判明。集落機能の維持に課題を抱えている実態も明らかになった。

 調査は、全国の中山間地や離島などの集落を対象に実施。九州では過疎法の指定地域などがある167市町村の1万6604集落が対象となり、限界集落が占める割合は前回の13・7%から19・3%に上昇した。全国では1028市町村の7万5662集落のうち、限界集落は1万5568。住民全員が65歳以上の集落は九州で110、全国で801あった。

 九州7県内の市町村が消滅可能性を懸念する集落は前回より140の増。具体名は公表していない。草刈りや冠婚葬祭などの集落機能が低下したり、維持が困難になったりしている集落は2285あった。

 過疎にあえぐ集落を抱える市町村では、豊かな自然や新鮮な農産物などを生かし、都市部との交流を進め、移住定住策に力を入れる。九州では10年度以降、子育て世帯の転入があった集落が全体の約3割を占め、全国のブロック別では最も高かった。前回調査で「10年以内に消滅の可能性がある」とされた九州の53集落のうち、実際に無人化したのは3集落だった。

 草刈り、祭りも”限界”

 福岡県八女市矢部村は、高齢化率が8割を超え将来“消滅”が懸念される集落を抱える。草刈りや祭りなど、既に地域の活動に支障を来している所もある。市は村外も含めた生活圏で行政サービスを提供するなど、人口減対策に懸命だ。

 山あいに川のせせらぎが聞こえる。車1台がやっと通れる道を上ると、ところどころに廃屋が目につく。同村の北矢部地区。5集落の16世帯32人のうち、26人(81・3%)が65歳以上だ。

 「皆、林業や農業で生計を立てていたが、担い手が減って山や棚田は荒れ放題」。トマトの手入れをしていた新原一義さん(70)がこぼした。3人の子は独立し、市内外にいる。集落は4世帯7人。半世紀ほど前は約60人が暮らしていたものの、今は新原さん夫妻が最も若い。道路脇の草刈りなど共同作業が年々、困難になっているという。

 集落では毎年11月、秋祭りを催す。新原さんは「今後、続けていけるか」と表情を曇らせる。飾りのしめ縄をなうには6人が必要だが、1組の夫婦が近く、ふもとの国道沿いに転居するからだ。

 旧矢部村は2010年2月、近隣4市町村と合併して八女市になった。旧市町村の今年8月末までの人口減少率は旧八女市が1・0%だったのに対し、旧矢部村は最も高い19・3%。市は高齢者などの移動手段確保のため、市内全域で乗り合いタクシーを運行する。本年度からは、転入世帯向けの一時金支給や住宅購入費の補助なども始めた。

 北矢部の新原サチ子さん(77)は夫と死別し、築81年の家に1人暮らし。県内に住む長女、長男と月1回、買い物に出かけるのが楽しみだ。自宅前での週1回のゲートボールは、同世代の仲間と近況を報告し合う大切な時間。「不便も多いけど、よそには住みたくない」。静かに前を向く。

この記事は2016年09月22日付で、内容は当時のものです。

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