いまどきの学校<16>メッセージ 筑豊で学ぶ子どもたちへ

 旅立ちの春。筑豊地区の市町立小中学校では教師110人が3月末で退職を迎えた。内訳は校長24人、教頭5人、教諭など81人。このうち校長を務めた3人に、「いまどきの子どもたち」との思い出や最後に伝えたい言葉を聞いた。

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 ●嘉麻市立熊ケ畑小前校長 大村和世さん(60)

 今の子どもたちを見ていると正直に夢を語ることが難しくなっていると感じる。学校で「総理大臣になりたい」と宣言したら、冷めた目で見られる風潮はないだろうか。インターネット上には雑多な情報が交錯し、年齢とは不釣り合いなほど社会のあらゆる面が見えすぎてしまっている。正しい判断がつかないから、自分の可能性にもふたを閉じてしまっているようだ。

 以前であれば成長に伴って見えてくる社会も広がっていった。学校に通うようになれば多くの友達ができ、通学路にある自然や商店の営みも知るようになる。子どもたちにはスマートフォンではなく地面の土を触ってほしい。指の間から泥が漏れる感触を知り、土の中にいる小生物を見つけるかもしれない。

 熊ケ畑小は全校児童12人(2015年度)の小規模校。同級生が少なく社交性が育ちにくい面はあったが、全校で新聞を読む授業を取り入れるなど少人数ならではの工夫もできた。自分で見つけた情報こそ、その後の自分を支えてくれる。これからの時代に必要なのは勉強をし続ける力や働き続ける力を身につけることで、主体的な判断は欠かせない。教師もその普遍的な目標を忘れずに指導を続けてほしい。

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 ●飯塚市立鎮西中前校長 上野鉄磨さん(60)

 初任地の方城中を皮切りに体育教師として田川、嘉飯山両地区の中学で働いた。荒れた学校で生徒指導を任されることが多く、その中で意識したのが気迫であり毅然(きぜん)とした態度だった。悪さをする子どもたちも実は信頼したい誰かを探しているが、上っ面の態度やきれい事はすぐ見透かされる。鎮西中でも生徒にホウキを振り上げられたことがあったが、最後まで真正面から向き合うことができた。

 家庭の協力をどう取り付けるかも重要な視点だ。生徒に問題があって親を呼び出しても、頭ごなしに批判したり糾弾したりしては対立しか生まない。まずは解決のため何を取り組むべきなのか、認識を共有する必要がある。教師には迎合するのではなく、親が考えない視点を示して信頼を得ることを指導してきた。

 今は各学校で学力向上にも力を入れている。ただ、生徒にも向き不向きはある。朝礼などで生徒に向けて話す機会があれば、お笑い芸人のバカリズムさんや棋士の加藤一二三さんなど全国的に活躍している筑豊の多彩な才能を紹介してきた。勉強以外の分野であっても、常に自分を変える意欲を持ってほしい。学校の使命はそうした生徒を守ることにある。

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 ●田川市立小中一貫校猪位金学園前学園長 光井敬夫さん(60)

 猪位金学園は14年度に猪位金地区の小、中学校が統合して誕生した。児童・生徒数は9学年で216人(15年度)。一貫校設立に当たっては、田川市教委勤務時代に企画段階から関わることができた。

 地域にとって120年超の歴史を誇る学校の存続は重要な問題。住民の要望を全て聞き入れることはできなかったが、校長を小中で1人にして教師を増やすなど、子どもにとって何が大切かを協議することで意見もまとまっていった。

 若い頃、学校は教師の聖域であり「公共教育の中立性を損なうので第三者は入れるな」と言われたが、今はその逆で地域の力は大きな教育資源だ。少子化はどの自治体でも直面する課題であり、学校の統廃合につながると否定的にとらえるのではなく、良い学校を作るきっかけになると受け止めてほしい。

 情報通信技術(ICT)教育についてもわれわれ教師はついマイナス面を考えてしまうが、良くも悪くも怖さを知らないのが今の子どもたち。国境を越えて厳しい未来を生き抜かなければならないからこそ、その挑戦意識を摘み取らないように配慮して、成長を後押ししてほしい。

この記事は2016年04月05日付で、内容は当時のものです。

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