阿蘇 いつか帰る 熊本・本震から半年 学生村 笑顔と決意 東海大生が住民と再会 熊本地震

 キャンパスライフを一変させた熊本地震から半年。甚大な被害に見舞われた熊本県南阿蘇村の「学生村」から、熊本市に転居した東海大農学部の学生たちが16日、慣れ親しんだ地を訪れ、世話になった黒川地区の住民らと再会した。学生村の一帯では壊れたアパートの解体が進むが、学生たちの胸には変わらぬ思いがあった。「いつか阿蘇に帰りたい」

 学生たち約140人は大型バス4台に分乗し、地震直後に住民たちと身を寄せた旧長陽西部小に到着した。アパートの大家たちが、避難先から出迎えた。「おばちゃん、元気にしとった?」「あんた、彼氏できたと?」。手を取り抱き合う学生と地域住民たち。半年ぶりの再会にもぎこちなさはない。手ぶらをわびる学生に、大家の中野ミチ子さん(67)は「あんたの笑顔がお土産たい」と背中をたたいた。

 8時間にわたりアパートの下敷きになって救出された2年の田尻佳槻さん(20)は、ヘリで搬送されて以来初めて阿蘇に戻った。アパートは数日前に解体されたばかり。「景色が変わっても、人は変わってないから大丈夫」と、大家の女性に笑顔を向けた。

 学生村にあった約70軒のアパートのほとんどが倒壊し、学生3人と地域住民1人が命を落とした。学生たちは、がれきをかき分け大家を助け出し、生き埋めの住民が救出されるまで外で声を掛け続けた。地域住民も、学生も、互いに被災し、助け合った。

 当時の様子は繰り返しメディアに取り上げられた。「でも、地震の前の黒川地区には楽しい思い出が詰まっていたことを忘れたくないんです」。イベントを企画した3年の橋村さくらさん(21)は語った。

 すれ違う誰もがあいさつを交わし、「1人になりたくてもなれなかった」と香川県出身の松本和真さん(21)が笑うほど、人間関係は濃密だった。熊本市のマンションに移った東京都出身の関口瑠梨賀さん(20)は「下宿のご飯のありがたさが身に染みた」。地震は当たり前の日常を奪った。

 午後6時半すぎ、参加者は数百の灯籠の前で黙とうをささげた。阿蘇キャンパスを存続するか廃止するかは、結論が出ていない。帰り際、学生たちは「やっぱり阿蘇がいいなあ」と夜空を見上げた。背中に大家の一人が声を掛けた。「戻っておいで」

この記事は2016年10月17日付で、内容は当時のものです。

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