亡夫との絆 開花待つ 熊本地震で死別 益城の村田さん 庭のしだれ梅 面影映し 熊本県

 熊本地震の被災自治体で最大の仮設住宅団地「テクノ仮設団地」の一室で、益城町の村田千鶴子さん(82)は慣れない1人暮らしを続けている。4月16日の本震での自宅倒壊で、夫恵祐さん=当時(84)=を亡くし、半年を迎えた。「62年間ずっと2人一緒だったから、まだおるみたい」。結婚記念樹として自宅庭に植えた梅の花を見上げる恵祐さんの写真を心の支えとし、再び花を咲かせる春を心待ちにしている。

 前震翌日の4月15日夜。「もう大きかとの来たから大丈夫だろう」と、かろうじて姿をとどめた自宅にわずかな空間を作り、ろうそくをともして過ごした。「狭いから一緒に寝ろかい」と恵祐さん。普段は別々だが、この夜、1枚の布団に横になった。「おまえと結婚してよかった。今が一番幸せ。施設に行かんでずっと一緒に暮らしていこう」。そう言ってくれた数時間後、本震が起きた。

 大きな揺れとドンという衝撃が突然同時に襲い、気を失った。意識の向こうで「村田さ~ん」との声が聞こえた。金属や木材を切断する音が続き「ここにいた」と足を握られた。がれきの下から救出された。

 恵祐さんが亡くなったことを後に聞かされた。救助隊からは「だんなさんが上にかぶさっていた。助けてもらった命だけん、生きらないけんね」と励まされた。夫らしいと思った。

 共に地元育ち。結婚前から知り合いだった恵祐さんは農家で、その後、町議会議員になった。思い出は結婚25年目、恵祐さん47歳、千鶴子さん45歳の時の東京旅行。「おまえは飛行機に乗ったことないから」と恵祐さんが提案してくれた。行きも帰りも富士山が見える“特等席”だった。

 自宅は全壊し、再びこの土地に住むことはできないかもしれないが、62年前に植えたしだれ梅は無事だった。梅は春になると見物人が訪れるほどで、毎年、2人で見上げた。きれいな花を咲かせるためには手入れが欠かせない。自宅を離れたため、知人に協力をお願いした。「梅は元気におってほしい」。2人の絆のように太い幹。来年2月に花が咲くのを楽しみにしている。

この記事は2016年10月18日付で、内容は当時のものです。

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ