いまどきの学校<14>異色の新人 多様な経験、授業に反映

 「ホニアラ」「アルハンゲリスク」「フェアバンクス」。児童が呪文のような言葉を黒板に書き出すと、地図帳を眺めていたクラスメートが次々と手を挙げた。板書したのは世界の地名。どこにあるか地図から探し出すゲームだ。

 伊岐須小(飯塚市伊岐須)5年4組を受け持つ金澤克宏さん(30)が、社会科の授業の一環として考案した。金澤さんは大手旅行会社の東京本社と上海支店で5年間働いた。ゲームはその経験を生かした試み。児童の集中力を高める効果があるという。

 異色の教師はもう1人いる。3年2組担任の田中綾乃さん(27)。ITベンチャー企業で3年間法人営業などをした経歴を持つ。

 国語の時間には自前のタブレット端末を教室前方の大型テレビに接続。専用ソフトを使って新出漢字の筆順を示すなど、独自のアイデアを取り入れた。垂水陽子校長は「黒板に集中させるために教室前方は掲示物を減らすなど、2人とも常識にとらわれないユニークな指導で教育効果も出ている」と目を見張る。

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 それぞれ個性を発揮して児童と向き合う2人だが、実は小学校の教員免許は持っていない。ともに東京のNPO法人「ティーチ・フォー・ジャパン(TFJ)」での研修を経て、飯塚市に派遣された。市が県に要請して発行された臨時免許で働いている。

 TFJは質の高い教育を全ての子どもたちに提供しようと2013年度から、独自に採用した若者を全国の公立小中学校に派遣する。子どもの貧困や学力向上の問題を従来の現場関係者だけで抱え込ませず、多様な経歴やスキルを持つ人材を送り込むことで教育現場の質を変え、解決につなげることを目指す。

 県内では本年度、福岡、北九州、飯塚3市が計6人を初めて受け入れた。任期は2年が原則。飯塚市では庄内中でも英語教師1人が働く。

 東京出身の金澤さんは「中央・地方にかかわらず全ての子どもたちを大事にしようというTFJの理念に共感した」。田中さんも「学生時代から国連の難民支援に関心があったが、今は日本でも貧困などの問題が起きている。児童と直に接することで自分ができることを探したい」と志は高い。

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 ただ、教師経験ゼロだけに戸惑う場面もある。

 金澤さんは子どもや保護者から年賀状が届いたが、帰省中ですぐに返事を書けなかった。そのため3学期が始まって以降、各家庭を回って寒中見舞いを手配りしたという。

 田中さんは児童同士がケンカでけがした際、自ら抱え込まずに垂水校長らに相談。家庭とも連絡を小まめに交わすことで信頼を得ているという。「支援が必要なのは新人教師も同じ。フットワークの軽さやトラブル時の対処能力など、ベテランも見習う点は多い」と垂水校長は前向きに受け止める。

 TFJによると16年度は田川地区など県内に十数人を派遣する予定だ。飯塚市の片峯誠教育長は「今後もニーズは高まると思うが、外部教師を際限なく増やすことはできない。その姿が本職の教師の刺激になっていることが最大の効果」と話す。

この記事は2016年03月08日付で、内容は当時のものです。

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