隠れた名刀 ゲームで光 玉名の「同田貫」 40本所蔵の市立歴史博物館 若い女性ら 入館者3倍

 熊本藩初代藩主、加藤清正に仕えた熊本県玉名地域の刀工たちが鍛えた日本刀「同田貫(どうだぬき)」が突如、若い女性に人気になり、地元の人たちを驚かせている。インターネット上で、名刀がアニメキャラクター風の美男子の姿になって活躍するゲーム「刀剣乱舞」が大ヒットし、巻き起こる刀剣ブームが背景にある。同田貫もゲームに登場しており、約40本を所蔵する玉名市立歴史博物館には関東や関西からも若い女性が続々訪れ、4月の入館者は前年同月の3倍の400人近くに上った。

 4月、同博物館を訪れた京都府宇治市の大学生、永井真理子さん(23)は、展示された同田貫に見入りながら満足そうに笑みを浮かべた。ゲームでは刀剣を擬人化した美男子の剣士を、合戦を通じて育てていく。剣士の中で同田貫が一番のお気に入りだ。「刀のイメージに合った男前に育てたい」と目を輝かせた。

 博物館によると、同田貫は実戦向けの丈夫な刀で清正の時代には熊本城の常備刀に選ばれ、豊臣秀吉の朝鮮出兵でも使われた。江戸期、細川氏の治世に衰退したが、明治時代初めまで玉名地域で作られたという。

 見栄えを意識しておらず、美術品としてはあまり注目されてこなかっただけに、降って湧いた人気に関係者は驚きを隠さない。博物館は急きょ、入館者が同田貫の模造刀と一緒に写真撮影できる特設コーナーを31日まで設置する。「同田貫を紹介した過去の図録も売れている。全くの予想外です」(職員)と話す。

 そんな折、市が文化財に指定する名刀の同田貫が博物館に寄贈された。1日、玉名市の吉崎超(わたる)さん(92)が所蔵していた上野(こうずけの)介(すけ)の銘入りを託した。上野介は、同田貫の初代刀工正国(まさくに)と同一人物といわれ、刀は約400年前に作られたとみられる。

 吉崎さんは戦後の混乱期、「日本の伝統を残したい」と刀を購入してから約60年間、手入れを欠かさず、保存状態が極めて良好だという。最近、長さ73センチの刀を抜いて油を引く手入れが難しくなった。

 吉崎さんは「なぜ女性が興味を持つのか理由が分からんが、郷土の刀。大切にしてほしい」と注目を浴びていることを喜んだ。

 博物館の牧野吉秀館長は「玉名の宝、秘められた物語を広く知ってもらういい機会になる」と意気込む。

 ●物語の背景求め“巡礼”

 インターネットのゲームやアニメなどバーチャル(仮想空間)で知った名所や史実を現実に確かめる観光が若者を中心に流行している。ゲーム「刀剣乱舞」が熊本県の同田貫の人気に火を付けたのも、そうした一つと位置付けられる。

 長崎県佐世保市の海上自衛隊佐世保史料館には1年ほど前から、関東などから若い男性が数人~十数人のグループで訪れる。旧海軍の戦艦が登場するオンラインゲーム「艦隊これくしょん」の愛好者たちだ。「今まで来なかった世代で驚いている。港に停泊中の護衛艦なども興味深そうに見ています」(史料館職員)

 愛好者がブログなどで誘い合って集う「オフ会」も佐世保市で開かれ、佐世保観光コンベンション協会は「これを機に史実も学んで、佐世保を好きになってもらえれば」と期待する。

 「物語の背景に迫りたい」-。そんな志向は従来、映画やドラマの舞台巡りとして現れていた。近年、テレビアニメや漫画の舞台を「聖地巡礼」と銘打って訪れるケースが増え、ネットやスマートフォンの普及とともにゲーム愛好者の間にも広がった。

 九州産業大の横山秀司フェロー教授(観光地理学)は「何でもバーチャルで済ませ、内にこもりがちな若者が増えているといわれる中、ゲームがきっかけでも外に出て実物に触れようとするのはいいことだ。ブームは一過性にすぎない。引き続き足を運んでもらえるよう、地元が新たな魅力発掘など知恵を絞る必要がある」と話す。

この記事は2015年05月09日付で、内容は当時のものです。

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