迷惑施設が宝生む 佐賀市下水浄化センターの試み<上>汚泥から良質な堆肥・排水 生産者や市民が行列

汚泥からできた堆肥を袋詰めする市民 拡大

汚泥からできた堆肥を袋詰めする市民

 「汚泥から作った肥料が引く手あまた?」「ノリ養殖をする漁師が感謝する排水がある?」‐。下水処理施設といえば、いわゆる“迷惑施設”というのが一般的だが、佐賀市下水浄化センターは、経費を節減しながら宝を生み出す場として活用されているという。最新鋭のハイテクを導入したわけでもない築35年を経過した施設がなぜ今、注目されているのか。その秘密を探った。

 ■汚泥が足りない

 遠く有明海を望める施設に立つ。下水汚泥から作った完熟堆肥を積み込む堆肥場をのぞくと、車で乗り付けた市民たちがスコップを手に、持参した袋にせっせと堆肥を詰めていた。

 わざわざ取りにくる理由を尋ねると「この肥料を使うと野菜がようできると聞いたから」「花が長持ちする」など。家庭菜園レベルの市民に交じり、軽トラックで乗り付けては手慣れた様子で荷台に堆肥を積むプロの野菜農家もいた。

 堆肥の代金は10キロ20円。センターが頒布を始めた2010年の時点では無料だったが、それだと野放図に持っていっては無駄にすることが分かり、翌年からこの料金に。皆、積んだ分を自分で計量し、自主申告で空き缶に代金を入れていく。

 こうして売れる汚泥堆肥は12年度で1400トン。沖縄・宮古島にも60トンが送られ、おいしいマンゴーができたと、好評だったという。「人気がありすぎて汚泥が足りない」と、市環境部環境調整監の前田純二さん(63)は苦笑いする。

 ■まず出口を模索

 堆肥の主原料は、市全域から集められた年間1850万トンの下水を処理する際に発生した沈殿物を、脱水処理した後に残る「脱水ケーキ」7300トン。約80%が水分だが、窒素やリンなどの肥料成分をたっぷり含む泥の塊である。

 国土交通省は、資源・エネルギー利用の観点から有効利用を模索しているが、脱水ケーキの処理方法は自治体によってまちまち。大半はコストをかけて焼却した後、埋め立てや建築資材に回されており、佐賀市のように堆肥として資源化している自治体は少数派だ。

 ただ「資源化した」といえるのは、それが堆肥として実際に田畑で使われた場合の話。福岡市は1994年から、重金属の含有量などの検査を行い、厳しい基準を満たした「普通肥料」として汚泥堆肥を作っていたが、昨年3月、販売不振で製造を中止した。

 一方、後発の佐賀市はまず堆肥の出口を模索した。できるだけ農薬、化学肥料を使わない農法を研究するNPO法人「循環型環境・農業の会」や近隣の農家などに集まってもらい、定期的に勉強会を開催。汚泥に混ぜる竹チップや微生物を研究しながら、コメ、麦、野菜、花、果樹など、あらゆる作物で汚泥堆肥をテストすると、キクのように連作障害が回避された作物も出て「これは良かばい」となった。

 「結果的に市民の利益になればいいから、価格は安くていい。農家の立場になって良い堆肥を作り、プロが使いたくなるよう仕向けた結果が今につながった」と、前田さんは分析する。

 ■ノリ養殖に活用

 処理場では汚泥だけでなく、アミノ酸などを多く含む排水も有効活用されている。

 まずは漁師。ノリ養殖をする際、その成長過程で窒素不足になると、色落ちなどの被害が出る。そこで同センターでは、冬場の10~3月の養殖期には栄養塩を多く含む排水を流し、4~9月の休養期には窒素やリンを抑えた排水にする‐といった定められた排水基準の範囲内で細かな調整を施し、生産者に喜ばれた。

 排水は農家も使っている。野菜や果樹の活性肥料や畜舎で使えば脱臭効果があるとして、給水所は水を求めるトラックで行列ができる人気ぶりだ。

 「人呼んで、宝の堆肥と宝の水」。前田さんは胸を張る。


=2013/07/24付 西日本新聞朝刊=

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