通訳案内士不足困った 中国客おもてなし 九州に課題 「無資格」でトラブルも 国、制度見直しへ

 中国から九州へのクルーズ船客が急増する中、国内を観光案内する通訳ガイドの「質」が問題となっている。国家資格である「通訳案内士」が付き添うことが望ましいが、実際は「無資格ガイド」も活動し、一部では高額な商品を売りつけるトラブルも発生。国は対策に乗り出す一方、60年以上前につくられた資格制度が訪日客増加に対応できていないとの指摘もあり、制度の見直しを進めている。

 9月上旬、黄色いポロシャツを着た20代の中国人女性ガイドが、太宰府天満宮(福岡県太宰府市)の参道を約40人の客を引き連れて歩いていた。身ぶり手ぶりで参道の鳥居や名所となっているカフェなどを説明している。旅行者はこの日朝に博多港(福岡市)に入った中国発のクルーズ船客だ。女性ガイドに尋ねると「通訳案内士の資格は持っていない。制度に詳しくない」と素っ気なく答えた。

 通訳案内士法は、外国語や歴史、地理などの知識を持つ同資格者以外は、報酬を得て外国人を通訳案内してはならないと定めている。観光庁は「観光の質を担保するため」と説明し、このガイドの行為は法律違反に当たる可能性がある。

 サービスとして観光案内する分には実害はなさそうだが、複数の観光関係者によると、無資格ガイドが参加するクルーズツアーの一部では「1本10万円」の磁気ネックレスや高額な健康食品をバス車中で販売。「商品の売り上げに応じてだけ、ガイドに給料を支払う会社もある」(福岡県の観光関係者)。観光庁にも「返品に応じてくれない」などの苦情が今年に入り寄せられるようになった。

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 無資格ガイドが活動する背景には、クルーズ旅行の価格競争激化がある。国内ツアーを請け負う旅行会社は経費削減のため、通訳案内士に依頼する代わりに中国人留学生のアルバイトなどで対応し、特定の免税店へ案内する「キックバック」や商品販売で利益確保を図る構図があるという。

 通訳案内士の人数不足も課題に挙がる。九州7県での中国語の登録者は124人。昨年度の中国語合格者数は全国でも81人にとどまる。福岡市の旅行会社は「有資格者を集めるのは現実的に不可能だ」と主張。「添乗員は時間管理だけで観光案内はしておらず、うちは『グレー』」と答える旅行社もある。

 JTB九州(福岡市)の場合、通訳案内士が乗車しないバスでは観光情報を書いた紙を配ったり、CDの音声を使って観光案内したりする代替策で対応。行政の担当者は「もし厳しく『無資格ガイド』を取り締まればガイドがいなくなり、クルーズ市場が成り立たなくなるジレンマもある」と打ち明ける。

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 通訳案内士法は1949年に制定された。有資格者だけに通訳案内を認めるのは「外国人旅行者が少なかった終戦直後の状況でつくられた制度だった」(観光庁の担当者)ためだ。しかし、訪日客が拡大する中で、有資格者だけで観光案内を担うのはもはや現実的に難しい状況になっている。

 国は昨年12月、制度見直しに向けた有識者検討会を発足させ、年内にも方向性をまとめる方針だ。観光庁観光資源課は「全国に『地域ガイド』のような制度を設け、研修で資格を付与するなどして質を担保したガイドを増やしたい」と説明。九州では来年度からツアーの内容に応じて旅行会社を支援するなど、旅行の品質向上を図る取り組みを始めるという。

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 ●ワードBOX=通訳案内士

 通訳案内士法に基づく国家資格。語学力や歴史、地理などの知識が必要とされる。全国で1万7736人が登録しているが6割は英語で、中国語や韓国語の人材育成が課題。九州観光推進機構(福岡市)は国の特区制度を活用し、2014年から九州限定の「特区ガイド」を育成しており、現在中国語は51人が登録している。

この記事は2015年09月28日付で、内容は当時のものです。

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