共産党的中国 ふしぎな常識<3>外交トップ 上には上

 中国では共産党の序列が最も重視される。会合や宴席では、最前列から最高指導部メンバーら要人が序列通りに並ぶことが多い。

 数年前、北京の人民大会堂で開かれたパーティーに招待された日本政府関係者は、あいさつをしようと王毅外相を探したところ、40番目ぐらいの席に座っていたのを見た。「あそこが彼の位置なんだね」

 かつて駐日中国大使も務め、日本にも知己の多い王氏は、今や中国外交の「顔」だ。習近平国家主席の外遊には必ず随行。訪問先のワシントンでは2月末、北朝鮮に対する制裁決議や南シナ海問題をめぐってケリー米国務長官と丁々発止のやりとりを行い、オバマ米大統領とも会談した。

 しかし、抜群の知名度と党の序列は関係ない。

 日本の外相は与党の有力者が起用されることが多く、岸田文雄外相は「ポスト安倍」候補の一人だ。米国の外相に相当する国務長官は、大統領に不測の事態が起きた場合の継承順位が4位。ケリー氏は2004年大統領選の民主党大統領候補でもある。

 一方、王氏は党政治局(25人)メンバーではなく、200人ほどいる党中央委員の一人にすぎない。画数順で公表される中央委員の序列は不明なので、26位から200位までの間ということになる。

 さらにいえば、王氏は外務省トップとはいえ、中国外交の責任者ではない。

 14年11月、習氏の「しかめっ面」の握手が話題になった安倍晋三首相との日中首脳会談。戦後最悪と言われた両国関係打開のきっかけとして注目されたが、実現が決まったのは会談の3日前。ぎりぎりまで日本側と交渉した中国側の責任者は王外相ではなく、楊潔〓国務委員だった。

 国務委員は副総理級で、現在5人いる。内閣に当たる国務院のメンバーだ。このうち1人が外交を統括し、外相より上位に位置付けられている。楊氏は前外相。王氏から見れば、前任者である先輩が“上司”としてにらみを利かしていることになる。

 ちなみに共産党にも中央対外連絡部という部門があり、部長は閣僚級である。「中国外務省は対外窓口と思ったほうがいい」と、事情通は漏らす。
 もっとも、外交トップである楊氏も党では中央委員にすぎない。上には上がいるのである

この記事は2016年03月02日付で、内容は当時のものです。

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