共産党的中国 ふしぎな常識<5>党の動静がニュース

 中国メディアのベテラン記者、王さん=仮名=は、たくさんの記事を書いてきた。実は、紙面に載らなかったものもある。

 出来が悪くてボツになったわけではない。読者は中国共産党の幹部たち。一般には公開しない、いわば内部報告を書くことも仕事の一つなのだ。社会情勢や世論の動向を党指導者が把握するために、「党の耳と目」の役割を果たす。

 中国の主要メディアはさらに、「党の喉と舌」と位置付けられている。

 例えば、中国国営中央テレビの看板番組である午後7時のニュース「新聞聯播」を見ると理解しやすい。習近平国家主席、李克強首相…というふうに、共産党の序列通りに指導者の動静を伝えることから始まる。大きな国際的なニュースや事故、災害が起きていようとあまり関係ない。

 党や政府の重要決定事項が、この番組で初めて発表されることも少なくない。映像がない場合、延々と文字が画面に映し出され、アナウンサーが読み上げる。

 昨年9月、習氏訪米の模様を伝えた中国メディアの記事は、その後、中国外務省が発表した会談内容と一字一句、同じだった。メディアと政府、その境界線は時に曖昧になる。

 昨年6月、中国紙の記者が大学入試の替え玉受験を行う犯罪組織に潜入、摘発につながったとして大きな話題になった。日本マクドナルドの仕入れ先だった上海の食品会社を取材し、期限切れ食肉の使用を暴露したのは上海のテレビ局記者。社会の不正に切り込むメディアも少なくない。

 党機関紙系新聞の社説を転載するよう党宣伝部から指示され、中国紙幹部が抵抗した例もある。が、やはり政府批判はご法度。「日常的に現場に介入があるわけではないが、われわれは政府を批判できないことを踏まえて書く」(中国メディア記者)。一種の自主規制だろう。

 そんな中、急速に普及したソーシャルメディアが影響力を増している。時にはデマが飛ぶし、政府批判は当局にすぐ削除されるが、市民にとって貴重な情報源や発信装置になっている。

 「限定的だが、ソーシャルメディアは言論の自由を与えてくれた」と、ある中国メディア幹部は言う。「新聞やテレビのことは誰も信じていない。だから自分でネットを通じて確かめようとする。ある意味、中国人は鍛えられていますよ」

この記事は2016年03月04日付で、内容は当時のものです。

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