いまどきの学校<12>学力向上策 反復学習と生活改善が柱

 「少年老い易く学成り難し」「吾輩は猫である。名前はまだない」

 各教室からリズム良く響く拍子木の音に合わせ、文学作品や古典をそらんじる元気な声が聞こえてきた。鞍手町立西川小(井上弘行校長、66人)では、昼休み後の掃除が終わると集中力や基礎学力向上を目指すドリルタイムが始まる。暗唱のほか、文章の書き取りや100問の計算問題に取り組む「百ます計算」などを毎日15分間続ける。

 西川小が学力向上のため、徹底した反復学習を取り入れたのは2012年。当時は6年生を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の成績も全国平均以下だった。

 4年目の本年度。全科目で全国平均より6~14点以上高く、都道府県別で最も高い秋田県の平均値も上回った。井上校長は「児童の吸収力はまさに乾いたスポンジ。暗唱も計算も教師の想像を上回るスピードで向上していくのが分かった」と振り返る。

 この日の教室には特別ゲストがいた。独自の学力向上法「陰山メソッド」を提唱する立命館大学教育開発推進機構教授の陰山英男さん(57)だ。陰山メソッドは、計算や音読などの徹底反復学習と生活習慣の改善が2本柱。西川小も、陰山さん監修のドリル(問題集)を利用して反復学習に取り組んでいる。

 ただ、どんなに反復学習しても周囲から遅れる子が出てくる。この日も授業後の研修会で、教師から「ついていけない子どもはどうしたらいいか」という質問が出た。陰山さんは「自分が周囲から遅れていることを知るのは重要だが、もっと易しい学習で、やればできる体験を積むのも大切。教師がそのバランスを見極めた上で、どちらか判断してほしい」と助言した。

 教師の課題として指摘したのは教室での「立ち位置」だ。「室内を移動しながら各児童の視界に入るようにすることで見られているという意識が生まれ、もっと集中力が高まる」と呼び掛けた。

 メソッドのもう一つの柱である「生活習慣の改善」を担うのは保護者だ。「集中力を高めるにはリラックスを生み出す環境が求められる。家族がともに笑顔でいられるかが学力向上の肝」。陰山さんはこの日、保護者ら約150人を対象に開いた講演会で、こう訴えた。

 規則正しい食生活や十分な睡眠を重視するメソッドに加え、西川小は学習面で家庭との連携を強める。児童は月3回、ドリルタイムの成果を家族に披露しており、井上校長は「ほめられることでやる気の向上につながる。家庭の協力のおかげで遅刻もなくなり、ほとんどの児童が始業前は校庭で体を動かしている」と効果を語る。

 陰山さんは12年度から飯塚市で学力向上アドバイザーを務め、16年度は田川市でもアドバイザーに就任する予定。「筑豊は全国的にも学力が低い地域だが、飯塚でも反復学習によって短期間で効果が出ている。市町村単位で取り組むのか、西川小のように学校単独でやるかは各自治体の事情で異なるが、家庭の協力があれば成果は上がるはず」。陰山さんは力を込めた。

この記事は2016年02月23日付で、内容は当時のものです。

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