犯人求め地道に鑑定 県警科学捜査研究所の技術職員 岩田 康秀さん(36) 佐賀県

 白衣とマスクを身に着け、サンプルに向き合う。「ここに、真犯人への手がかりがあるかもしれない」。岩田康秀さん(36)は県警科学捜査研究所(科捜研)の技術職員。

 科捜研には法医、化学、物理、文書・心理の4部署があり、それぞれが科学捜査や研究をしている。

 岩田さんは大学、大学院で応用化学を学び、24歳で県警に入庁。人由来の痕跡や証拠を扱う法医に所属、28歳のころ、DNA鑑定の研修を受け鑑定官となった。現場に残された血痕や体液などからのDNA抽出や鑑定に注力する。学生時代に刑事ドラマを見て、科捜研に興味を持ったのがきっかけだったものの、ドラマと現実との大きな違いを感じた。

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 TVドラマで見ていたDNA鑑定はものの10分で結果が出て、「こいつが真犯人だ」と解決。実際にはこうは行かない。まずDNAを取り出すまでにも手間や時間がかかるのだ。

 例えば現場に血痕のようなものがあった場合、まず薬品を使って本物の血液かどうか判断する。血痕と分かれば、人のヘモグロビンに反応する器具を使い、人血であることを確認。血痕の中にはタンパク質などDNA以外の余分なものが多く含まれており、薬品と混ぜたり、遠心分離機にかけたりしてDNAだけを取り出していく。

 これで、ようやくDNAの鑑定が始まる。量が少なかったり、時間を経たりしたサンプルは、DNAの抽出だけでも困難を極める。DNA鑑定し、誰の残した痕跡なのかが判明するまで数日~数カ月を要するケースもある。大事件が発生すれば、一日に10件以上のサンプルの抽出、鑑定があるという。扱うものは捜査や公判で重要な証拠となる可能性もあり、集中力が問われる任務だ。「こんなに地道で大変な仕事なのかと驚いた」と岩田さん。

 2013年に県内で起きた連続強盗事件では、現場に残された軍手の鑑定をした。長く使用した軍手からは付着した手あかなどからDNAが取れることもあるが、唾液などの体液と比べて抽出や鑑定は困難。骨が折れる作業だったが、結果は容疑者のDNAと一致。容疑者が現場にいた大きな証拠となった。岩田さんは「被害者のことを考えると、仕事の疲れも吹き飛ぶ」と話す。

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 「結果が出ただけで満足するな。なぜそうなったのかを考えろ」。先輩に言われた一言を忘れない。鑑定に間違いは許されない。結果は容疑者や被害者の人生に関わるからだ。常にあらゆる角度で鑑定結果に向き合う視点を持つよう、心がけている。

 入庁したころは血液型鑑定が一般的だったが、あっという間にDNA鑑定が主流となった。その技術も日進月歩で進化している。しかし、仕事にかける思いは変わらない。「より厳密な鑑定で、県民のために尽くしたい」。きょうも岩田さんは手にしたサンプルを凝視する。

この記事は2016年10月17日付で、内容は当時のものです。

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