いまどきの学校<10>スクールバス 安全な通学と効率化模索

 古処山中腹の標高約400メートルにある嘉麻市の長野地区。辺りが明るくなり始めた午前7時半、いつものエンジン音が聞こえてきた。

 「おはようございます。今日もよろしくお願いします」。嘉穂小6年の佐藤瞭一君(12)、4年の州陛君(10)、1年の有純さん(7)のきょうだいが自宅前に止まったスクールバスに乗り込んできた。着席を確認した運転手の田代英則さん(66)が静かにアクセルを踏み出す。きょうだいが乗った「千手ながの線」は同小まで約15キロの道のり。約30分かけて最大14人を送り届ける。

 運行を担うのは、市教委から委託を受けた地元の嘉穂観光。田代さんは西日本鉄道グループに約30年間勤務し、筑豊地区や福岡市で路線バスを運転した経験がある。児童と会話することはあまりないが、運転席からは車外と車内を映すモニターが確認でき、子どもの様子には常に気を配る。山間地は携帯電話が通じない場所も多く、「トラブルが発生した時のため、どこまで行けば電波が入るかも確認している」と田代さん。安全には万全を期す。

 嘉穂小は2014年度に旧嘉穂町内の5小が統合して新設された。スクールバスは筑豊の小中学校で最多の9路線あり、旧大隈小校区以外の旧4小校区が送迎対象。朝1便と午後2便の計3回運行され、全校児童295人のうち140人が利用している。

 通常は午前7時前後の発車15分前までに、待機を含めた運転手10人が嘉穂小に集合するが、悪天候の際は社員が午前3時から山間部を中心に各路線の状況を確認し、同5時半までに福永貴義校長に報告する。運行中止などが決まれば、校長が直接対象の児童宅に連絡を入れるという。

 1月中旬には大雪や路面凍結のため、長野地区へのバスは2週間運行中止になった。その間、佐藤君らきょうだいは家族の送迎で通学したが、母親の靖子さん(49)は「旧千手小のころはバスがなく、毎日送迎していた。そのときに比べたら負担は大きく減った。田舎でも安心して暮らしていける」と感謝する。

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 路線は児童の卒業、入学に合わせて毎年見直されるが、嘉麻市は厳しい財政状況を踏まえ、嘉穂中のスクールバスとの抜本的な路線の統合を検討中だ。

 市学校教育課によると、嘉穂中は牛隈地区を除いて嘉穂小と校区が重なる。本年度は旧千手小、旧泉河内小校区に1台を走らせ21人が利用しているが、4月からは佐藤君が中学に進学することなどから台数を1台増やす計画だ。その結果、長野地区には小中がそれぞれバスを走らせ、きょうだいを別々に乗せることになる。市の担当者は「こうした路線が小中合同バスの対象になる」と説明する。

 市が1日に議会に報告した第3次行政改革の実施計画案によると、路線の統合は17年度からスタート。現在市が直接運営する中学のバス事業の民間委託や、余ったバスの一般利用なども進め、20年度までに計3311万円の削減効果を見込む。

 市の担当者は「安全と通学手段の確保は大前提で、児童・生徒が一人でもいる路線を廃止することはない。その中で運営の効率を上げていきたい」と話す。

この記事は2016年02月09日付で、内容は当時のものです。

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