いまどきの学校<8>特別支援学校 障害の垣根どう越える

 スタートの合図と同時に、生徒たちが一斉に校庭を飛び出した。22日、直方市下境の直方特別支援学校。高等部に通う知的障害のある生徒たちが駅伝の練習に励んでいた。「頑張れ! ファイト!」。沿道から声援を送るのは、肢体不自由の生徒たちだ。

 同校は昨年4月、直方市内の聾(ろう)学校と養護学校が合併して誕生した。肢体不自由の子どもを対象にした部門を新たに設置。聴覚、知的、肢体という三つの障害部門に3歳~高校生計289人が通う。こうした特別支援学校は、直方を含めて全国で3校だけだ。

 「多様なあり方を認め合い、全員参加型の共生社会を目指す」狙いだが、「現実にはまだまだ」と高倉一斉校長(58)は言う。28日開催予定の駅伝は養護学校時代から33年続く伝統行事で、知的障害の生徒が中心。今年は開校から間がないこともあって聴覚障害、肢体不自由の生徒をどうやって出場させるかの協議は進まず、出場を見送った。「障害の垣根を越えた授業や行事ができればいいが、まだ模索している段階」と明かす。

 コミュニケーションの方法も手探りだ。1学期の終業式。養護学校での指導が長い高倉校長は、あいさつの始めと終わりに初めて手話を用いた。しかし、聴覚障害部門の教師の反応はいまいち。「あいさつ全体の内容まで生徒は理解できなかった」と指摘した。

 2学期の始業式では、あいさつ全文を手話で表現したが、今度は知的障害や肢体不自由の生徒が内容を理解できなくなった。悩んだ末、2学期の終業式から、パワーポイントを使って映像を駆使したあいさつに変更。ようやく好評を得た。

 開校から1年近くがたち、生徒に変化の兆しが出てきた。知的障害の生徒には、気持ちを言葉で表すことが苦手な子どももいるが、「聴覚部門の生徒が手話であいさつするのを見て、身ぶり手ぶりで表現することを覚えた子もいる」と旭豊彦教頭は話す。

 聴覚障害部門の教師は「合併して、聾学校時代にはなかった生徒会ができた。知的部門に通う生徒会長は自主的に手話でのスピーチをしてくれた」と喜んだ。

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 4月からは障害者差別解消法が施行される。障害のある人が健常者と同じように学習や仕事ができるよう「合理的な配慮」を公的機関に義務付け、民間事業者には努力を求める。

 高倉校長は「地域社会にも障害のある子どもたちの暮らしを知ってもらうことが大事」と話す。知的障害部門の中学生たちは22日、直方市殿町の「ギャラリーのぐち」を訪ね、美術の授業で制作した展示作品を見学した。

 担当した美術教師は「子どもたちは作品を通して、社会との接点を持てる。自信にもつながる」と語る。

 ただ、合併後、学校が大所帯になり、全校生徒が出品することは難しくなったという。地域との接点をどう作るか、現場の模索は続く。

この記事は2016年01月26日付で、内容は当時のものです。

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