いまどきの学校<6>伝統校再建 付属中開校、確かな歩み

 授業は黒板ではなく、その脇にある55インチの大型モニターを教師がタッチしながら進んだ。本年度開校した県立嘉穂高付属中(飯塚市潤野)が月平均1回、土曜に開く「嘉穂タイム」。筑豊地区の小中学校教師ら約80人が12日に初めて招待された。

 英語の授業は「私の好きなこと」についてのプレゼンテーション。スクリーンはコンピューターと連動しており、画面が進むたび、事前に集めた英作文から抜き出した「間違いを起こしやすい例」をクラス39人で共有した。外国人のスピーチ動画も再生され、目線や身ぶりにも注意が必要なことを学んだ。

 続いてテーマに沿ったビデオレターを全生徒がタブレット端末で撮影した。動画は交流するオーストラリアの中学校にインターネット経由で送る。古野守和教頭は「嘉穂タイムは75分。通常の一コマでは足りない学習から実践までの流れが一度に進むため、学習効果も高い」と説明する。

 同中が力を入れるのは「アクティブ・ラーニング」という指導法。なるべく多くの生徒に主体的な参加の機会を持たせて思考の活性化を促す。情報通信機器の活用もその一環で、タブレットはクラス全員が使えるよう計40台配備され、体育などを含めた全教科で利用しているという。

 見守った教師の反応はさまざま。意欲的に学ぶ元教え子に笑顔の小学校関係者30人に対し、中学からの26人の目は真剣そのもの。「どの生徒も一定の能力があるからこそ意見の出し合いも活発。自分たちの学校でこうはできない」と飯塚市立中の教諭は語る。

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 大学進学率の低迷や少子化の影響で、2013年度には普通科志願倍率が0・99まで下落した嘉穂高。伝統校再建を託された付属中は14年度6・29倍の人気を集め、関係者を安堵(あんど)させた。14日に県教委が発表した本年度の倍率は4・49倍で3割弱の減少だったが、篠木大典校長は「数字は予想の範囲内。初年度と同じように優秀な生徒が集まるはず」と不安は見せない。

 自信を裏付ける一つが英検の結果だ。生徒79人中12人が既に中学卒業程度とされる3級を取得した。中学中級程度の4級も16人。授業以外の対策は毎朝10分間ラジオの基礎英語を続け、9月の嘉穂タイムで対策講座を行ったのみ。あとは「日常教育で主体性を身につけた生徒の独自学習の成果」として、インターネットなどで積極的に発信を続ける。

 筑豊各地から生徒が集まる特色を生かした試みもある。出身地や関心のある地区ごとに担当を決めて地域の歴史や文化を紹介する研究ポスターを2日間かけて作成し、互いに発表した。「炭鉱や遠賀川など自分たちが生まれた土地を知り、筑豊を語れる人材を育てたい。グローバルを意識しつつ足元を固めることが外国人と接する際に強みになる」と篠木校長。

 順調に走りだしたかに見える伝統校「嘉穂」の一貫教育だが、2年後の高校入学時には、付属中以外から進学してきた生徒との共存が始まり、さらに大学受験も控える。進学実績ほど冷徹な成否の判断基準はない。それでも、グローバルな視点で地方(ローカル)を考える「グローカル」な意識の若者たちが筑豊で育とうとしている点には期待を寄せたい。

この記事は2015年12月22日付で、内容は当時のものです。

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