いまどきの学校<31>キャリア教育 職場体験で「働く」を考える

 トヨタ自動車九州、日本航空、JTB九州、JR九州、資生堂ジャパン…。19日、県内に事業所を持つ企業や官公庁など計25団体が集まった合同企業説明会が、飯塚市のコミュニティセンターで開かれた。担当社員らは、業務内容ややりがいを熱弁。聞きながら熱心にメモを取るのは、リクルートスーツ姿の就活生ではない。まだあどけなさが残る中学1年の生徒たちだ。

 説明会は将来の進路選択に役立ててもらおうと、飯塚商工会議所が初めて開催。飯塚市立中全10校のうち3校が賛同し、約250人の生徒が参加した。参加団体はパンフレットを見せたり会社説明の映像を流したり、自社をアピールした。

 済生会飯塚嘉穂病院(飯塚市)は、白衣姿の薬剤師2人が生徒に薬や器具を見せながら説明した。参加した同病院の古川貴弘薬剤部長(45)は「子どもにとって病院で仕事をしている人といえば医師か看護師のイメージが強い。私たちの仕事に少しでも興味を持ってもらえる機会になればうれしい」と笑う。

 飯塚商工会議所の担当者も「子どもたちは、世の中にいろんな仕事があることを感じたはず。これからも実施していきたい」と手応えを見せた。

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 1990年代前半までの多くの中学校は、学業成績を基準に卒業が目前に迫った時期に集中的に行う「進路指導」を実施してきた。文部科学省によると、教育制度を考える国の審議会が99年、職業に関する知識を身に付けさせて主体的に進路を選択させる「キャリア教育」を提唱。その後、「受験先を選ぶ」教育だけでなく、将来を見据え「働くとは何か」についても教えるようになったという。

 キャリア教育の一環で全国に浸透したのが、子どもが事業所で実際に働いてみる「職場体験学習」。国立教育政策研究所(東京)によると、全国の中学校の約2割が97年度以前に職場体験を導入していたが、2000年度から始まった「総合的な学習の時間」に伴って実施校が増えた。05年度には公立中の9割が実施し、14年度現在で98・4%が取り組んでいる。

 飯塚市でも、全市立中で職業体験学習を行っている。二瀬中は8月上旬の2日間、校区内を中心に33事業所で2年生約110人が職場体験をした。同中の福田隆太郎教諭(41)は「体験後の生徒たちの様子や感想文を見ると、大人が働いている様子をじっくり見たことで、将来について考えるきっかけになっていることが分かる。自分たちが子どもの頃はなかったが、とても良い制度だと思う」とうなずく。

 職場体験学習は学校が協力企業を探して交渉する。市内のある企業の広報担当者は「生徒を受け入れれば、企業イメージアップにつながり地域にPRできる」と職場体験を前向きに捉えるが、「規模がそれなりに大きい会社でなければ、従業員は通常の業務に手いっぱいで、生徒を安全に預かって指導をする余裕はないのでは」と本音を漏らす。

 二瀬中の福田教諭は「企業に職場体験の協力を持ちかけても、断られることは珍しくない。企業側の事情も分かる。でも、教師としてはさまざまなジャンルの職種の会社を用意し、生徒に将来を考えるたくさんの選択肢を与えたい」と語った。

この記事は2016年10月25日付で、内容は当時のものです。

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