器は両手で扱って

 猫の小町と申します。皆さんがお困りのことをたちまち解決していきます。第3水曜は「和食」の作法や文化について、マナーなどの教養を身に付ける「フィニッシングスクール インフィニ」(福岡市)の副校長で、和食検定実務1級認定者の三浦由加里さん(44)にお助けいただきます。

 夏休みも近づき、本格的な夏がやってきました。暑くなると食卓の器に、涼しげなガラスや白磁を選びたくなりませんか。和食において器は、料理を引き立てる存在としてとても大きな役割を果たします。フランス料理のフルコースでは、前菜やメインディッシュなどが同じシリーズの器で統一されています。しかし和食の会席料理では、季節や料理の内容により、形や絵柄、素材もさまざまなのが特徴です。

 季節で使い分けるのは、夏はガラス、青竹、すだれや、有田焼などに代表される薄手の白磁、冬は温かみを感じさせる厚手で深みのある萩焼や唐津焼、ふた付きの漆器などです。また祝いの席では、鶴亀や松竹梅といった縁起物の絵柄、福禄寿(ふくろくじゅ)などの吉祥文字が描かれたものを使うこともあります。日本ならではのおもてなしの心は、器選びにも表れているのですね。

 和食器の汁わんは木製のため「椀(わん)」、飯わんは陶磁器が主流なので「碗(わん)」と書きます。他の文化と違って器を手に取ったり、直接器に口を付けて飲んだりします。それで熱い汁物には、手になじみ、熱を伝えにくい漆器を使うのが一般的です。漆のことは英語では「ジャパン」と呼ばれるそうで、海外から見るととても日本的なのでしょうね。

 さて、和食器は両手で扱うのが基本です。手のひらに乗る程度の大きさの器なら、なるべく手で持ちましょう。おわんはもとより、汁気のある小鉢、煮物の器、しょうゆの入った小皿は持つことができます。箸を持ったまま器を取り上げるのはタブーで、いったん箸を置き両手で器を持ち上げ、箸を取り直します。手のひらより大きな器や大鉢、刺し身や天ぷらを盛ってある器、焼き魚の平皿などは持ってはいけない器です。

 ふた付きの器は、ぱっと開けた一瞬の香りや見た目が楽しみです。開けるときは、左手でおわんを支え、右手で糸底(いとぞこ)(ふたの持ち手)を持ちます=写真(1)。ふたの裏側を手前に向けて斜めに持ち上げ、ふたの水滴が数滴落ちるのを静かに待ちます=同(2)。ふたを振って水滴を落とさないようにしてください。ふたは裏返しにして両手で持ち、器やお膳の右側に置きます=同(3)。ふたを傷つけないよう、他と重ねないようにしましょう。食べ終わった後は、ふたは元通りに戻します。

 九州は唐津、有田、波佐見焼、山口県にも萩焼と、陶器や磁器を楽しむ環境に恵まれています。お気に入りの器を季節ごとに大切に使う、そんな丁寧な暮らしを心がけたいですね。


※この記事は2016/07/20付の西日本新聞朝刊(生活面)に掲載されました。

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