【人の縁の物語】<27>ママの病気 絵本で伝え 難病の阿部さん 子ども向けに説明本

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絵本の完成を喜び合う阿部円香さんと長女の眞歩ちゃん

 親が病気になると、子どもは心細くなる。「少しでも不安を和らげてあげたい」との思いを込めて、福岡市の医師、阿部円香さん(41)が一冊の絵本を完成させた。「ママ、なんで? びょうきのママにききたいの」(1260円、書肆侃侃房(しょしかんかんぼう))=写真。子どもが受け止められるよう、病気のことを易しく説明する内容だ。自身も難病を患っており、同じ立場で子育て中の親たちに「役立ててもらえれば」と願っている。

 体のあちこちがしびれる。痛みも…。昨年6月、阿部さんは多発性硬化症と診断された。神経の情報がうまく伝わらなくなり、脱力や視力障害などが起こる病気だ。その後、免疫異常で肝炎を引き起こす自己免疫性肝炎であることも判明する。

 医師である自身の診療経験から「病は人生に突然襲ってくる」と身に染みていた。それでもショックは大きかった。

 5カ月ほど入退院を繰り返す中、長女の眞歩(まほ)ちゃん(4)の存在が支えだった。同時に、最も気掛かりでもあった。「眞歩のこと、好かん?」と寂しそうに聞いたり、暗い色ばかり使って絵を描いたり、「独りにしないで」と突然泣いたり。

 「病気は、眞歩が投げたボールがママに当たったからかな」と自分を責める言葉を口にしたこともある。

 病気のこと、薬のこと、そして誰のせいでもないことを、易しく伝えられないか。そこで絵本作りを思い立った。画用紙に色鉛筆で、ずっといい子にしていなくても甘えていいし、病気でも笑顔で過ごせば楽しくなれることも書いた。

 完成後、製本したいと地元の出版社に相談してみた。がん患者の家族や子ども向けの本はあるものの、難病や慢性疾患に使える本はほとんどないという。「多くの人の助けになるはず」という編集者の言葉に背中を押され、出版を決めた。

 挿絵は友人に描いてもらった。縁は広がる。共感した医師や患者、臨床心理士らが、それぞれの立場から病気と向き合う家族へ温かいメッセージを寄せてくれて、絵本に収録することになった。

 今は通院を続けながら週に2~3日、職場に復帰している。患者の立場を経験してみて「孤独感や悩みに寄り添う医療者になれたら」との思いがより強くなったという。

 ただ、左手足のしびれは残り、疲れやすさもある。症状が悪化すれば、車椅子生活や視力障害になる可能性もある。それでも夫(39)から「一生懸命に闘病する姿を見せるだけで十分だよ。眞歩は何かを学ぶよ」と言われ、救われた気がした。

 娘からは今も病気について質問攻めに合う。完成した絵本を読みながら答えると、4歳なりに理解して「荷物、持つよ」「暑いけど大丈夫?」と気遣ってくれるようになった。「自分が支えになっていると実感してもらうことが、子ども自身の安心につながります」。阿部さんは力を込める。

 ◇本は8月初旬発売。B5判、48ページ。問い合わせは書肆侃侃房=092(735)2802。

=2013/07/30付 西日本新聞朝刊=

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