「やさしいNIE」 全国大会リポート<上>特別支援学校でも切り抜き、発表 文章表現より豊かに

特別支援学校におけるNIE活動の実践が発表された分科会。聴覚障害の高校生は社説の書き写し、読者から投稿された意見を題材にした討論もしているという 拡大

特別支援学校におけるNIE活動の実践が発表された分科会。聴覚障害の高校生は社説の書き写し、読者から投稿された意見を題材にした討論もしているという

 教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の全国大会が25、26日、静岡市であった。18回目となる本年度の大会は、誰でも無理なく楽しく取り組める「やさしいNIE」がスローガン。発表された授業実践などを、2回に分けてリポートする。

 分科会では今回初めて、障害のある子どもたちが学ぶ特別支援学校での取り組みが報告された。

 「きれい、すごい、ひどい、といった言葉ではなく、何が美しいのか、すごいのか…。生徒たちの文章表現がより豊かになった」

 そう報告したのは、静岡県立沼津聴覚特別支援学校・中学部の松本美智枝教諭。

 中学部では朝の時間、日直の生徒が、自分が興味を持ち、スクラップした記事を持ってきて、感想やコメントを手話で伝える。共同生活する寄宿舎でも、日々の出来事や行事を紹介する壁新聞を作って掲示。異年齢交流にもつながり、作文などの表現力の幅を広げているという。

 耳が不自由な生徒たちと同じように、活字と写真で事象を伝える新聞にも音はない。しかし、音やにおい、雰囲気を伝えようと、新聞は文章表現、見出し、レイアウトを工夫する。そこに通じ合うものがあるのだろう。

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 視覚障害の児童生徒のクラスには、点字化された教科書だけで400冊が並ぶ。視覚障害の約8割は弱視とされる。最近では、文字を拡大できる拡大読書機や、パソコンソフトの音声転換装置なども普及し、弱視者も新聞を読めるようになっているという。

 千葉県立佐原高校の石毛一郎教諭は、前任の県立千葉盲学校で高等部1年生を対象に、点字新聞(週刊)に毎月掲載される連載記事「私のしごと」を授業に活用した。

 連載記事には、それぞれの職場で働く視覚障害者たちの仕事ぶりや人生がつづられている。石毛教諭らは連載記事の2年分をそろえ、生徒たちはその中から興味を持った人物を選択。その主人公に生徒が点字の手紙を出す-という授業に取り組んだ。

 新聞記事を、将来の職業選択、キャリア教育につなげる試み。石毛教諭は「同じ障害がある先輩たちが、人生をどう切り開いていったのか。そして自分はどう生きたいのか。家族で話し合う、きっかけにもしてもらいたかった」と話した。

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 岐阜県立大垣特別支援学校の富田聰子教諭は、知的障害の高等部2年生を対象に、新聞の切り抜き、自分なりのレイアウトに取り組んだ活動を発表した。

 子どもたちにとって、新聞の切り抜きは容易ではない。話題などは一つの箱形に紙面編集されるが、ニュースの場合、段が変わると、記事の始まりが、左から右に飛ぶケースもあり、文脈を追う読解力が求められるからだ。しかし、当初は付きっきりの指導が必要だった子どもも、徐々に慣れてくるという。

 スクラップする記事からは、子どもたちの考えやこだわりも読み取れる。身近なスポーツ、地域ニュース、天気などにこだわる子どももいれば、震災、戦争、領土問題などにまなざしを向け続ける姿もあり、「子どもの視点や性格を知る手がかりになる」という。

 その一方、小学部では、「丸める」「破く」「かぶる」「敷く」など、遊びの道具としても活用されているという。「おむつを包む」「紙粘土に再生する」といった活用もあり、新聞にはそんな役割もあるのだと、あらためて教えられる。

 増加傾向にある発達障害を含め、特別支援教育の中にNIEをどう位置づけるのか、そのあり方は…。そんな視点からの模索も現場では始まっていた。

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【ワードBOX】NIE

 Newspaper in Education(教育に新聞を)の略称。授業に新聞の記事や写真などを使って、理解を深めようとする運動。1930年代に米国で始まり、日本では静岡県で85年に開かれた新聞大会で提唱され、運動が広がった。2011年度から小学校を皮切りに導入された新学習指導要領には、新聞の積極活用が盛り込まれた。学校ぐるみで取り組む本年度の「実践指定校」は571校(昨年度より17校増)。内訳は小学校231、中学学209、高校110、小中連携7、中高連携7、特別支援学校5、高等専門学校2。

=2013/07/30付 西日本新聞朝刊=

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