ポスト爆買いは「思い出作り」 福岡に“コト消費”狙う外国人向け観光案内所
「爆買い」に陰りが見える中、福岡市の商業施設「キャナルシティ博多」に外国人向けの観光案内所が21日オープンする。最大の特徴は、着物の着付けや折り紙といった和文化を体験できる点。訪日客の消費行動は、家電や高級ブランド品など「モノ」から体験型の「コト」へシフトしつつあるとの指摘もある。「思い出作り」にポスト爆買いの照準を合わせた実験が、インバウンド(訪日外国人客)の集客拠点で始まる。
■「ブランド品よりも日本文化」
年間で延べ160万人を超える外国人が集まるとみられているキャナル。その数は、福岡市の人口をも上回り、九州観光では「訪日客が必ず立ち寄ると言っていいほどの定番施設」(旅行関係者)だ。
そんなインバウンド拠点の中心部にあるビジネスセンタービル1階に、観光案内所「キャナルツーリストラウンジ」(床面積約100平方メートル)はオープンする。
英語、中国語、韓国語を話せるコンシェルジュ3人が常駐。キャナルの案内にとどまらず、九州、福岡の観光やイベント情報を無料で提供する。
和室コーナーもあり、20日の内覧会では、招待された外国人客が着物の着付けや折り紙などを体験した。
初めて書道に挑んだというドイツ人のジェシカ・サマーさん(16)は「この字がいい」と、提示された漢字の中から「夢」を選び、毛筆で書き上げた。「ブランド品にはまったく興味がないわ。日本が好きなので、日本の文化を体験する方が楽しい」そうだ。
■“上得意”の中国人が買い控え
運営は、商業施設向けシステム開発のイースト(東京)が担当する。
アジアに地の利がある福岡で、「コト消費」を拡大させられるか「テストマーケティングを行っている」という。
昨年8月、イーストは福岡市・今泉に第1号の観光案内所を開設した。
着物を着て神社で写真を撮ったり、かっぽう着を着てすしを握ったりする体験サービスが「人気を集めた」という。
今回は、大勢の訪日客が集まるキャナルで「体験型インバウンドサービスを拡充していく」狙いだ。
背景にあるのが、「爆買い」の陰りだ。消費の主役となる中国人客は、円高や中国の関税率アップの影響で、1人当たりの消費額が減少傾向にある。
観光庁によると、7〜9月の訪日外国人旅行者の消費額は、前年同期比2・9%減の9717億円と、4年9カ月ぶりに減少した。
中でも、目立つのが「買い物代」の落ち込み。同17・0%減となった。
中国人は、消費額全体の45%を占める“上得意”。
その消費動向は、高額なブランド品や家電から離れ、医薬品や化粧品など消耗品へシフト。観光庁の田村明比古長官は「買い物以外の体験も重要」と話す。
■客足は過去最高を超える勢い
キャナルも例外ではない。炊飯器や温水洗浄便座(ウォシュレット)といった家電をまとめ買いする光景はすっかり影を潜めた。
それに代わって増えているのが、美容サービスへの問い合わせだ。日本の「カワイイ文化」の影響なのか、美容室やネイルサロン、まつげに人工毛を装着する「まつげエクステンション」などを「体験したい」という声が寄せられる。
こうしたニーズの変化にどう応えていくかが、外国人需要を取り込めるかどうかの鍵を握る。
九州運輸局によると、九州を訪れた外国人は今年8月末(速報値)で222万3447人。その勢いは、過去最高となった2015年(283万2384人)を上回るペースという。
熊本地震で遠のいた客足も回復し、7月は前年同月比24・4%増の36万6855人と、単月で過去最高を記録したほどだ。
チャンスはある。アジアに地の利がある福岡で、ポスト爆買いをめぐる動きはなお過熱しそうだ。
「キャナルツーリストラウンジ」の主な体験サービス
●着付けは着物が1時間2700円。忍者服が1時間1080円。
●折り紙は45分間1080円。書道は1時間1944円〜。出来上がった作品をTシャツに印字して購入すれば3500円。
●ほうじ茶や日本酒などを楽しめるカフェラウンジ(1杯216円〜756円)もある。
●旅行に役立つ「かんたん日本語講習」や、テナントの日本人従業員向けの外国語講習は、それぞれ30分間540円。
●一般住宅に観光客らを泊める「民泊」の紹介や、手荷物を預かったり、宿泊先や空港へ配送したりする有料サービスもある。
この記事は2016年10月21日付で、内容は当時のものです。




























