発達障害者受験 配慮進まず 九州7県公立高、措置十数件 入試要項 2県未記載 「不利になる」申請回避も

 九州7県の2016年度県立高校入試で、発達障害(未受診を含む)の受験生に時間延長などの特別措置が取られたのは、全志願者約8万5千人のうち十数件(約0・02%)にとどまることが西日本新聞の取材で分かった。発達障害の可能性がある中学3年生は3%程度の割合でいるとされ、ほとんどが申請せずに受験したとみられる。入試要項に配慮規定を明記していない県がある一方、受験に不利に働くと懸念して申請しない保護者も多いようだ。

 九州各県の教育委員会によると、16年度入試での措置数は、福岡5、佐賀4、長崎1の計10件。他の4県は申請がごく少数で「本人の特定につながる」などとして非公表だった。14、15年度も同様の傾向だった。

 各県教委によると、出身中学を通じて申請があれば、時間延長や別室受験、解答用紙の拡大、漢字に読み仮名を振るなど、必要な措置を検討するという。このうち、福岡、佐賀、大分、鹿児島各県は、入試要項に「障害がある受検者等への配慮」などと明記。熊本県は「身体に障がいがある受検者-」と記しており、長崎、宮崎両県は記述がない。

 文部科学省によると、発達障害の可能性がある中学3年生は40人学級に1人程度と推計される。だが、入試で特別措置を取った公立高は、全国約3500校のうち12年度93校▽13年度171校▽14年度177校▽15年度126校-と3%程度にとどまる。ある県教委の担当者は「申請がないと対応できない。周知が行き届いていない面もあるのではないか」と分析する。

 あえて申請を見送る保護者もいる。目に見えない障害のため同級生の親から苦情を受けたり、教師の無理解から怒られてばかりだったりと、誤解や偏見に悩んだ経験を持つ当事者や家族が少なくない。福岡県の父親は「かえって受験に不利になるのでは」として申請をしなかったという。

 今年4月には障害者差別解消法が施行され、公立高の入試や授業で障害の特性に即した「合理的配慮」が義務化された。熊本県教委は「発達障害にも既に対応している」として入試要項を変更する予定はないとするが、長崎県教委は17年度から改める。宮崎県教委は「今後検討する」としている。

 ●中学が申請後押しを

 ▼日本LD学会前理事長の上野一彦東京学芸大名誉教授(発達臨床心理学)の話 発達障害者は特定分野に秀でた人もいる。万能型を求める現在の入試制度では才能の芽を摘み、国家の損失につながりかねない。高校は義務教育ではないとはいえ、大学入試センター試験では配慮されており、高校入試でも十分な措置が必要だ。小中学校での支援を手厚くして、申請を後押しするべきだ。

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 ●ワードBOX=発達障害

 自閉症やアスペルガー症候群、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの総称。集中力が続かない、意思疎通が苦手、物事を計画的に進められないなど、人によって特性が異なる。脳機能障害が原因とされるが、詳しいメカニズムは分かっていない。2012年の文部科学省調査では、通常学級に通う小中学生で6・5%、中学3年は3・2%に可能性があるとされた。

この記事は2016年10月23日付で、内容は当時のものです。

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