鍛錬重ね笑顔届ける 九州プロレス 記者が入門 福岡県

 九州で唯一のプロレス法人団体「九州プロレス」(福岡市東区)。派手な技と個性的なキャラクターで会場を沸かせるレスラーたちの日常は、地道な努力の積み重ねだった。レスラーたちはプロレスの練習だけでなく、団体運営の事務作業も自分たちで行う。現在は12人が所属。興行のほかにボランティア事業も手掛け、プロレスで笑顔を届けようと日々奮闘している。学生時代、女子柔道に熱中し格闘技と聞けば血湧き肉躍る記者が、華やかなリングの裏の“仕事場”を訪ねた。

 ●華やかなリングの裏…自ら事務作業も

 「筋トレは休みの日でも必ずやります。筋肉痛が心地よくなるまで追い込まないと」と、九州プロレスの副理事長めんたい☆キッドさんは話す。毎日ジムに通い2時間近いウェイトトレーニングを行う。若手選手はこれに、激しいリング練習も加わる。当たり前だがここでは練習が“仕事”なのである。レスラーと触れ合うのは初めての私だが、その胸板は思ったより厚く、思い切り「水平チョップ」をたたき込んでも、びくともしない。

 毎年、春と夏に入団試験を突破した新人レスラーが2、3人入団してくる。しかし日々のトレーニングに耐えかね、道半ばで挫折してしまう若手も少なくない。記者も実際にリングに上がってみる。ウオーミングアップとして、リングの端から端まで5往復を全力で走るだけで息が上がる。コーナーから対角線に走って反対側のコーナーに跳び移る技も体験。並大抵の練習量では、軽々とやってのけることはできないと痛感した。

 リングを跳び回る軽快なプレイスタイルを得意とする、めんたいさんのようなレスラーは、食事制限も必須。「プロテインを飲んで空腹に耐えます」と笑う。反対に、大きな体でどっしりと構えるキャラクターのレスラーは、満腹になっても食べ続けなくてはならないという。

 レスラーには団体を運営する能力も求められる。年間約40回行っている興行の会場やチケットの手配から、ポスター製作やゲスト選手への出演依頼など仕事は尽きない。熊本地震被災地への慰問やチャリティー試合の開催など、ボランティア活動も精力的に行う。その結果、練習時間が短くなることもあるという。「体さえ鍛えていればいいんだろう」と安易に考えていた自分が恥ずかしくなる。

 「日々の練習と細かい事務作業の積み重ね。それらを両立してこそ観客を魅了する興行ができる」とめんたいさん。試合前は強いプレッシャーを感じるが、会場を沸かせ、けがも無く試合を終えられた時の喜びは格別という。「お客さんに喜んでいただけるなら、毎日頑張れます」。さわやかな笑顔に胸がキュンとした。

 ●東区の「フリースクール玄海」 道場に通い「痛みを知る」

 不登校や引きこもりの中高校生が学ぶ「フリースクール玄海」(福岡市東区)は週に1回、授業の一環として九州プロレスの道場に通っている。今年は15人前後が参加している。

 引率する嶋田聡代表は「内向的になりがちな子どもたちにとって、相手の痛みを理解し、人目を意識したパフォーマンスを学ぶ機会になっている」と授業の狙いを説明した。毎年3月にはシナリオや衣装作りから生徒たちが手がける発表会も行っている。

 生徒は九州各地をはじめ、関東や関西から集まり、大半が寮生活を送っている。広島県出身の浅井田哲平さん(15)は、10カ月間プロレス授業に参加し、9月末で地元に戻るため「卒業」した。「心が折れそうな時は先生や仲間が支えてくれたので、諦めずに続けられた。体力がついたし、精神面でも自信がついた」と話した。

 ●12月4日「筋肉せいもん払い」 タッグで熱戦 天神

 九州プロレスは12月4日午後4時から、福岡市・天神のアクロス福岡で「筋肉せいもん払い’161DAYタッグトーナメント」を開催する。めんたい☆キッド選手とばってん×ぶらぶら選手の博多名産コンビ「ぶらぶら☆ぴりり」や桜島なおき選手と白くま選手の鹿児島コンビ「薩摩藩」らが、タッグマッチで熱戦を繰り広げる。チケットは九州プロレス=092(400)9938。

 ●私の道具=チャンピオンベルトは強さの証し

 リング上で顔の公開をしていないレスラーにとってマスクは必需品。試合中、耳などが痛くならないようマスクをかぶるレスラーたちは特注で作っている。「昔からマスクマンに憧れていた」と話すめんたいさんのマスクは名前にちなんでピンク色。正義の味方か悪役か、レスラーのキャラクターを分かりやすく作っているという。

 レスラーにとって強さの証しとなるチャンピオンベルト。「これをつけているとファンの盛り上がりが違う」と第4代九州プロレス選手権王者のめんたいさん。闘いの歴史や汗が染み込んだベルトの価値は計り知れないという。

 そのほか、食事の代わりに栄養補給をするプロテインや試合中に筋肉と汗を美しく見せるためのベビーオイル、体の調子を把握するための体重計などレスラー必須のお仕事道具はたくさんある。

この記事は2016年11月22日付で、内容は当時のものです。

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