新年に座禅で修行 心落ち着け、自分を見つめる 福岡県

 新しい年が始まった。2017年は良い年にしたい。そのためには、これまでの自分自身を見つめ直す必要がある。考えてみると、普段の忙しい生活の中で、心を落ち着けて物事を考える機会は少なかった。思いを巡らせていたところ、大学受験を控えた予備校生による座禅体験会を取材したことを思い出した。新春にどっしりと腰を据えれば、何かが変わるかもしれない。期待を胸に曹洞宗の興禅寺(戸畑区天神2丁目)を訪ねた。

 寺に着くと、187センチの私の背丈を超える人が迎えてくれた。定直清哲(さだなおせいてつ)住職(46)だ。威圧されそうな印象とは全く違い、物腰は穏やか。座禅を始める前に心構えを教わった。

 「座禅は悟りを開くための手段ではないし、座禅をしたからといって、気合いや集中力が高まるわけではありません」

 では座禅で、どんな効果が得られるのか-。定直住職は「何もないんですよ」ときっぱり。座禅は結果や効果を求めるものではないという。

 実際に座禅をやってみる。本来は45分間の座禅を2回行うが、初心者は20分間を2回で体験してもらうことが多いとのこと。「坐蒲(ざふ)」と呼ばれる丸い座布団のようなものに座り、足首を膝の上に乗せるようにして足を組む。背筋を伸ばし、肩の力を抜く。胸いっぱいに息を吸い込み、鼻からはき出す。視線は1メートルほど先の畳を見つめる。姿勢を保つだけで一苦労だ。

 「五感や心から湧き出る思いを断ち切りながら座る」。定直住職の教えに従おうとするが、外からバイクの音が聞こえると「そろそろ夕刊の配達かな」、鼻水が出て「息が苦しい」…。

 つまらないことに気を取られてしまう。そんな自分の心を住職に打ち明けた。定直住職によると、座禅に対する考え方はさまざまで、「無心になれる人は、まずいない」という。日々修行を積む住職でもそうなのかとほっとした。

 予備校生たちの取材の際、定直住職が警策(きょうさく)という木製の棒で生徒たちの肩をたたいていた。受験生に気合いを入れる意味もあったようだが、実際は座禅中に居眠りしたり、集中できなかったりする人をたたくという。「大きな音が鳴りますが、痛くないですよ」。話を聞いて、たたいてもらった。「パシッ」という乾いた音が部屋に響き、もちろん痛かった。

 姿勢を正し、ひたすら座る。単純な行いだが、時間がゆっくりと流れ、心が落ち着いた。日常では得られない感覚だった。「1日座ったからといって特に意味はありません。座禅は終わりのない一生をかけた修行です」。定直住職の言葉が心に響いた。

 今回の座禅で自分自身を見つめ直すまでには至らなかった。これからも私なりの、座禅の「修行」を続けていこうと決意した。

この記事は2017年01月13日付で、内容は当時のものです。

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