いまどきの学校<42>中学空手授業 五輪視野に普及狙う

 「突きは右手を素早く前に出す」「蹴りは背筋を伸ばして姿勢を正しく」

 体感気温は氷点下近くに冷え込んだ田川市立鎮西中の体育館。1年生67人がはだしになり、突きや蹴りなど空手の基本動作を繰り返した。

 指導するのは同市内の道場「正進館」の館長で、筑豊地区空手道連盟事務局長を務める園田俊一さん(41)。園田さんは2015年度から田川市内の中学校で空手を教える。

 目指すのは学校現場での競技普及。中学では学習指導要領の改定で12年度に武道が必修化された。田川市は当初から全中学校で剣道を教えているため、園田さんは14年度、教育長に空手の採用を売り込んだ。その後、校長会でもプレゼンテーション(計画案の提案)を行った。

 強調したのは、学校現場で空手を教えるメリット。武道の授業中に生徒がけがを負った事故は、県内でも12年度からの2年間で318件発生した。園田さんは「空手道場では打撃を含めた技を学ぶが、学校で教えるのは形。接触がないため、他競技に比べてけがのリスクは非常に少ない」とメリットを語る。防具や柔道着を購入する必要もなく、体操服での練習が可能だ。

 働きかけが奏功し、15年度は田川、伊田、弓削田各中で、16年度もすでに田川、伊田両中で指導を行った。本年度が初めてとなる鎮西中では、体を動かす前に図書室でオリエンテーションを開き、護身を目的に発祥した空手の歴史や、悪ふざけやいじめに使わないことを説明した。

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 県教育委員会体育スポーツ健康課によると、学習指導要領で定められた武道の時間数は中1、中2でそれぞれ年間13時間程度。中3については球技などとの選択制で、各校の方針に委ねられている。

 県内の公立中341校で最も多く採用されているのは柔道で、15年度調査(複数回答あり)では約7割を占めた。剣道が約4割で続き、空手は9校(約2・6パーセント)にとどまった。弓道やなぎなたに取り組む学校もあるという。

 筑豊では田川、宮若両市が全中学で剣道を、飯塚、嘉麻両市が柔道を教えており、直方市は学校ごとに柔道か剣道を選択している。鎮西中の楠木達也校長は「新しい競技を採用するには、学校にその競技の部活があるかなどに左右される。適切な指導者がいるかも重要。今回の授業で生徒の反応を見て、来年度以降の方針を決めたい」と語る。

 鎮西中の空手授業は25、26日に計4時間行われた。2月6日に最後の2時間があり、学んだ形を復習した後、チームに分かれて試合に臨む。生徒自身が審判を務めることで、判定基準とともに公平に審査を下す心の大切さについても理解を深める予定だ。

 普及に向けては課題もあり、学校が増えることで平日昼に指導できる経験者の確保が重要になる。園田さんの本職は臨床工学技士。今はボランティアで教えているが、謝金などの条件整備も今後は必要という。

 園田さんは「空手は20年の東京オリンピックで正式種目に決まった。6時間という時間は短いかもしれないが、多くの中学生に体験してもらうことで競技への理解が深まり、空手界を盛り上げることにつながる」と期待を寄せる。

この記事は2017年01月31日付で、内容は当時のものです。

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