いまどきの学校<45>性教育 いのちの大切さ伝える

 「今日はいろんな家族について勉強しましょう。家族って何かな。まずは自分たちについて考えてみようか」

 飯塚市立椋本小の3年1組の教室で矢野文教諭が児童32人に問いかけた。矢野教諭は子どもがいない夫婦や高齢者世帯、施設で暮らす子どもたちなどをイラストで紹介。児童は「親と離れて暮らしていても、他人と家族になれることが分かった」「家族の形はいろいろあって、どこの家族も支え合い、助け合っている」と気付きを発表した。

 時間割上は理科の授業だが、主な目的は性教育。同小は各学期に1回ずつ「性教育週間」を設けており、児童の心身の発達程度に応じて全学年で授業を行っている。

 1年生の1学期は「からだをきれいにしよう」が目当てで「体にはいろんな穴があり、それぞれ大切な役割を果たしている」ことを学習。6年生になると「免疫力や抵抗力」「エイズの正しい知識」について理解を深める。

 同小の山本繁教頭は、「性教育に見えない授業もあるかもしれないが、命や家族の大切さを知ることで、将来自分たちが家族をつくる立場になったとき、それぞれ行動に反映されるはず」と説明する。

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 県筑豊教育事務所によると、義務教育段階での性教育について、小学高学年や中学では保健・体育などで教えることが多いが、明確に指導に必要な時間数などが設けられているわけではなく、学校の裁量によるところが大きい。

 「椋本小のように全学年で系統立てた性教育を行う意味は大きい」と指摘するのは、県立大看護学部の古田祐子准教授(助産師教育)。

 同大では古田准教授らを中心に筑豊地区の中学校などで年間約10回性教育を実施するが、「男女の局部の洗い方などは本来は写真で丁寧に教えたいが、『イラストで』と求められることもある。できるだけ対応しているが、あまりに『自主規制』が多いと断ることもある」と打ち明ける。

 実際に子どもたちが自分の体に興味を持つのは3~5歳児から小学低学年にかけてで、「このときに正しい知識を身につけることが性教育の始まり。家庭が担うべき役割も多いが、学校で性教育を行うならばこの段階から行うことが重要」と語る。

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 性教育の充実は失われる命を守ることにもつながる。古田准教授によると、県内で2014年度に19歳以下の少女が行った人工妊娠中絶の数は千人当たり11・1件で、都道府県別では最多。「近年ずっと全国最多の状態が続いている」と厳しい現状を語る。

 各自治体では個別の対策も始まっており、北九州市は12年度から県助産師会と連携して、希望する市内の小中学校に助産師を派遣して性教育を実施する。同市は「人工妊娠中絶に加え、妊娠や出産によって望まずして学業を断念してしまう数を減らしたい」と説明、15年度は94回が実施された。久留米市も本年度同様の事業を始めている。

 県助産師会の副会長を務める古田准教授は現在、田川市にも性教育や生徒の妊娠について実態調査を行うよう働きかけており、「将来的には筑豊でも助産師派遣などの事業が始まれば」と期待している。

この記事は2017年02月21日付で、内容は当時のものです。

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