対馬仏像 少女像に続く日韓の懸案に 判決に韓国政府驚き

 【大田・曽山茂志】長崎県対馬市の観音寺から盗まれ韓国に持ち込まれた「観世音菩薩坐像(かんぜおんぼさつざぞう)」について大田地裁は26日、「数百年前に倭寇(わこう)に略奪された」として元の所有権を主張した韓国・浮石寺への引き渡しを命じた。坐像を管理する韓国政府は「略奪は断定できない」として即日控訴したが、日本への早期返還の見通しは立たなくなった。従軍慰安婦問題を象徴する少女像で険悪化する日韓関係に新たな懸案が生じた。

 判決後、坐像を管理する韓国文化財庁の担当者は西日本新聞の取材に「倭寇が略奪した具体的な証拠もないのに、浮石寺の所有権を認めたのは驚いた」と答えた。だが、一連の裁判で韓国政府の代理人は観音寺や県指定有形文化財として管理してきた長崎県の立場にはほとんど触れず、「国内世論に配慮してか、一貫して腰が引けていた」(日韓外交筋)のが実態だ。

 韓国政府は、過去に朝鮮半島から日本に渡った文化財は約7万1千点に上ると推定し、このうち「不法・不正」に持ち出されたものは返還を求める方針だ。ただ政府関係者は「今回の坐像は返還を求める対象ではなかった」と明かす。文化財返還運動に取り組む市民団体の慧門(ヘムン)代表も「文化財返還は韓日の協議で進めるべきで、窃盗で韓国に持ち込むことは正当化できない」と判決を批判する。

 日本政府は、釜山の日本総領事館前に設置された慰安婦少女像に抗議して長嶺安政・駐韓大使らを一時帰国させ、帰任のめどは立っていない。その後も、韓国では次期大統領選に名乗りを上げた大半の候補者が慰安婦問題を巡る日韓合意の見直しを訴えるなど、関係修復に不安が広がっている。韓国の聯合ニュースは「韓日間で少女像、独島(島根県・竹島)に続き、新たな問題が発生してしまった」と指摘した。

この記事は2017年01月27日付で、内容は当時のものです。

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