車の「墓場」空前の活況 北京市 旧型車処分に奨励金制度 排ガス、市民の不満も抑制!?

 世界一の車大国と呼ばれる中国。北京市は渋滞緩和などを目的に車両増加を抑制しており、ナンバープレートは抽選に当たらないと入手できない。そんな中、マイカーを廃車にする動きが急速に広がっている。「ブーム」の背景を探ると、ある事情が見えてきた。 (北京・相本康一)

 北京中心部から車で1時間ほどの郊外。ある自動車解体工場には、ひっきりなしに車が搬入されていた。

 「今なら春節(旧正月、今年は1月28日)の前までに廃車手続きは間に合いますよ」と事務所受付の女性。敷地内を見渡すと、解体を待つ車がぎっしり積み上げられている。さながら、車の「墓場」のようだ。

 訪れた男性(53)は、自家用車を廃車にするつもりで様子を見に来たという。「大気汚染はつらい。市民の一人として対策に協力しないとね」。そう、廃車は大気汚染対策なのである。

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 中国政府は1990年代後半から、自動車の排ガス基準を順次、厳格化してきた。現在は欧州連合(EU)の基準とほぼ同レベルとされるが、古い基準に基づいて生産された車は、排ガスを余計に吐き出しながら、まだ街の中を走っている。

 そこで北京市政府は昨年12月から今年6月末までの間、古い基準である「国家1号(国1)」「国家2号(国2)」の車を廃車処分にした場合、最大1万2千元(20万円程度)の奨励金を支給する新政策を打ち出した。過去にも似た制度はあったが、今回は金額が大きい。廃車にして新車に買い替えた場合、抽選を経ずにナンバーも入手できる。「中古車市場に出すより奨励金の方が高値だ」(北京市の50代男性)とあって、一気に火が付いた。

 中国メディアによると、北京市内の大手解体工場の廃車受付数は昨年12月、従来の5倍に急増。「さばききれないから、受け付けをストップした」という業者も。ある工場では毎晩のように残業を続け、12月だけで約4千台を廃車にした。

 北京の保有台数約560万台のうち、国1、国2の車は計約40万台。全体の8%程度を占めるが、排ガス量でみると全体の30%に跳ね上がるという。当局が躍起になるのもうなずける。

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 北京の蔡奇市長は年明けの会合で「環境警察部隊」の創設を発表した。屋外バーベキューや、ごみと農作物の焼却などを摘発するという。メディアは大々的に報じたが、「屋台のささいな煙より、工場が排出する汚染物質を何とかすべきだ」(自営業者40代男性)といった不満の声が出ているのも事実だ。

 今回の廃車奨励策も、どの程度の効果があるのか、分からない。実際に車両が解体されているかどうか、監視の必要もある。廃車されたはずの車が大量に中古車市場に出回ったケースも過去に報じられている。

 とはいえ、大気汚染解消は一朝一夕には達成できない。市民にとっては我慢の日々が続く。汚染緩和にひと役買った上、懐が豊かになる廃車奨励策は、排ガスだけでなく、市民の不満を抑制する意味があるのかもしれない。

この記事は2017年01月23日付で、内容は当時のものです。

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