【こんにちは!あかちゃん 第8部】「産後うつ」と向き合う<2>「そのまま」受け止めて

 「産後うつ」とはどんな病気か-。九州大学病院(福岡市)の「子どものこころの診療部」で特任教授を務める吉田敬子さんは四半世紀近く、周産期の精神医学に関する研究に取り組んでいる。吉田さんに、産後うつの症状や要因、対処法について聞いた。

 Q どんな病気ですか。

 A 「うつ病性障害」という精神医学的な病気です。統計によって異なりますが、出産した女性の約10%に起こるといわれています。多くの場合、産後1~2週から症状が出始めます。

 症状としては、抑うつ感のほか、以前は興味のあったことにまったく関心が持てない、集中力がない、眠れない、考えがまとまらない…。自分に価値がないと思ったり、周囲への罪悪感を抱いて自分を責めたり、自殺を考えたりもします。

 Q マタニティーブルーとは違うのですか。

 A それは産後の数日間に起きる一時的な気分の変動なので病気ではないし、治療の必要もありません。

 Q 産後うつはなぜ起きるのですか。

 A 一つは、産前にうつ病や不安障害などで精神科に既往歴がある場合です。社会的、心理的な要因としては、身近な夫や実母など家族から情緒的なサポートが得られなかった場合も起きやすいです。情緒的なサポートとは、例えば母親が「赤ちゃんがかわいく思えない。自分はおかしいのでは…」と不安を打ち明けたとき、家族が寄り添って共感することです。

 このほか、人生において大きな不幸が起きたときも症状が出やすくなります。妊娠中に夫が失業した、離婚した、自分に病気が見つかった…。一般的には、身近な人の死や重病、震災など、大きなライフイベントが生じた場合はうつ病になりやすいといわれており、産後うつも同様です。

 Q 産後うつは家族にどう影響しますか。

 A 本人はもちろん、情緒的な発達に偏りが見られるなど子どもにもマイナスの影響があり、夫婦や家族の人間関係も変わったりします。一方で、情緒的なサポートができる家族であれば、協力し合うことで、かえって絆が深まったりもします。

 Q 発症したら、本人はどうすればいいのですか。

 A まず大切なのは、気持ちを周囲に打ち明けること。体の自覚症状も含め、話しやすい相手に伝えましょう。

 Q 家族のサポートは?

 A 本人の話を聞き流さず、そのままを受け止めてください。「お母さんだからしっかりしなさい」など、むやみに説教するようなことは避けましょう。一番つらいのは、周りから「おめでとう」と言われたり、見舞客が相次いだり、お祝いの席に出たりしたとき、心が付いていけず、疲れを感じることです。

 Q 治療法は?

 A まずは身近な人から情緒的なサポートを得ることです。さらに、地域や病院の保健師、助産師からアドバイスをもらいます。それでも症状がよくならない場合は、うつ病治療薬などの薬物療法もあります。授乳中でも薬物療法を受けられる場合もあるので、主治医とよく相談しましょう。

 通常は、出産後数カ月で母親の気持ちは少し楽になるものですが、育児や家事までを含めて十分にできるようになるには、産後1年くらいかかることもあります。本人も周囲も焦らないことが大事です。

 Q 予防法、心構えを教えてください。

 A 妊娠中から知識や対処法を持っていれば、発症しても慌てずに済みます。特殊な病気ではなく、多くの産後女性に発症しやすいと知っておくだけでも、気分が楽になります。

 最近は母親学級や両親学級で、産後うつについて説明する病院も増えてきました。自治体が産後に行う母子訪問や福祉機関でもケアしてくれます。気軽に相談してくださいね。

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 ●九州大学病院「子どものこころの診療部」特任教授 吉田敬子さん

 厚生労働省の研究の一環として、産後うつなどを調べる母親の精神面の評価と、育児支援のあり方を研究し、実践している。著書に「母子と家族への援助―妊娠と出産の精神医学」などがある。


=2013/08/07付 西日本新聞朝刊=

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