あねさん工房のカボス 知っちょくれ!うちん一品 あの産品は、いま(2)

 正社員は2人だけ、しかも無報酬。そんな小さな株式会社が、山村の農業に希望の灯をともしている。

 女性の知恵 里に希望

 大分県豊後大野市緒方町の「あねさん工房」。田植え体験会などを催す山村交流のNPO「むらおこし『水車』」の進藤充啓さん(69)と小代富男さん(75)が2009年、「地元の女性が働く場を作りたい」と設立した。合併前の緒方町の一村一品だったカボスで、コンフィチュール(マーマレード)、ピール(甘露菓子)、ポン酢などを生産。収穫期にはパートの女性ら約20人が作業する。

 その会社がこの2年で、直営のカボス農園を一気に5倍の約10ヘクタールに広げたのだ。市の高齢化率は県内3位の40・8%(16年11月現在)。担い手の高齢化に直面し、休耕田や耕作放棄地も目立つ中で、異例の決断だった。

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 あるヒット商品が、進藤さんたちの決断を後押しした。間引きしたカボスで作るスイーツ「やまのまりも」。「実を捨てるのはもったいない。この形のままでお菓子にできないか」と、小代さんの妻スミヱさん(73)が4年前に作った。

 酸味がきつい小ぶりの実を、6、7回もあく抜きして甘露煮に仕上げた。皮の食感はそのままで、上品な甘さ。手間を惜しまない農村の女性だからこそできた一品だ。阿寒湖(北海道)の特別天然記念物「マリモ」にそっくりな外見が話題を呼び、東京の大手ホテルや高級スイーツ店から注文が相次いだ。

 これが「客寄せパンダ」(進藤さん)になった。「まりも」の人気にけん引される形で、コンフィチュールなども知名度が上がり、取引先が広がった。現在の売上高は当初の約10倍。女性の知恵が生んだ商品が原動力になって、地域づくりの歯車を回し始めた。

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 新農園でも、作業するのは今までと同じ女性や高齢者。収穫した実を入れたコンテナは20キロ以上もあり、上げ下ろしが腰や膝に大きな負担をかける。そこで、無理なく働き続けられるよう、進藤さんらは、あるアイデアを実践しようとしている。

 生産効率を上げるため、カボスの苗木は通常、できるだけ密集させて植える。新農園の苗木は碁盤状に植えて、間隔を2メートル以上開けた。木に軽トラックを横付けすれば、収穫した実を荷台に直接入れることができ、コンテナは不要。ここにも現場の知恵があった。

 さらに農園を広げて、就農を志す若者に貸し出す構想も温めており、夢が膨らむ。「緒方のうまいカボスと農村の知恵を受け継ぎながら、古里を支えたい」と進藤さん。新農園のカボスは今年、全ての木が実りを迎える。

 

 ◆カボス 大分県原産とされる特産の果樹。県産は5883トン(2013年)で、全国の生産量の9割以上を占める。クエン酸やビタミンCを豊富に含み、さわやかな香りが特徴。ユズやスダチなどと比べて甘みは強く酸味は弱いため、ほかの食材の味と調和しやすいとされる。

 

 次は:「やまろ渡邉」の干物


=2017/01/06付 =

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