「やまろ渡邉」の干物 知っちょくれ!うちん一品 あの産品は、いま(3)

 「ふわっとしておいしい。これも佐伯のお魚やろ?」
 
 「そうよ。大人になってもこの味を覚えちょって、『佐伯の魚はうまいよ』って、宣伝しちょくれな」

 食卓に魚復活へ情熱

 大分県佐伯市城下西町の佐伯小学校。この日は、地元の食材を給食に取り入れた「さいき活(い)き活(い)き献立の日」。エソのすり身の天ぷらをほおばりながら、4年生の子どもたちが声を上げる。

 “先生”は、海産物問屋「やまろ渡邉」会長の渡邉正太郎さん(62)=同市米水津。県内に2人しかいない水産庁認定の「お魚の語り部」で、魚にまつわる文化を伝える役を果たす。

 ほかに、アジの開き、カマスのフライ、ハモのつみれ団子など十数品が給食メニューになっており、同社も食材を納める。

   ◇   ◇

 日本の食卓から消えていく魚の干物。旧米水津村の一村一品だった「丸干し」は今も主力商品だが、生産量はピーク時の7割ほど。でも、給食で子どもたちの反応は悪くない。なぜ?

 食育を通して見えてきたのは、「骨があって食べづらい」「調理が面倒」との理由で、親が魚料理を出さなくなり、子どもは好き嫌い以前に、食べる機会がないという現実だった。

 「食べてもらうには、できるだけ調理の手間がない商品が必要」。渡邉さんは、忙しい朝でも数分で作れる商品に力を入れる。

 中骨をあらかじめ取り除いた魚の開き「中骨なし」シリーズは、フライパンで軽く焼けばOK。身をほぐす手間もない。マアジ3枚300円、サバ1枚250円など、値段も手頃だ。

 たれに漬けたブリの切り身を、熱々のご飯に乗せた郷土料理「あつめし」は、そのたれを商品化。揚げ物が好きな子ども向けにブリの冷凍カツも作った。

   ◇   ◇

 豊後水道を望む佐伯湾は良質の漁場や漁港を多く抱える。「佐伯の殿様、浦でもつ」。江戸時代にはこんな言葉も生まれるほど、水産品が藩財政を潤した。

 やまろ渡邉は1908(明治41)年創業で、渡邉さんは3代目。開き、丸干し、刺し身…。朝昼晩の食卓には当然、魚が並んだ。「毎日毎日、刺し身、刺し身。もう飽きて、自分であつめしを作って食べちょった。うまかったなあ」

 そんな「魚はおいしい」という体験を、記憶に刻んでほしい-。渡邉さんらが始めた催しが「よのうづ海ん衆まんぷく市」だ。見た目に難がある干物を渡邉さんら業者が持ち寄る。参加者は自分で選んだ干物をしちりんで焼き、無料で食べ放題。会場は海を見渡す魚市場。毎回市民でにぎわい、地域おこしにも一役買う。

 「魚をおいしく食べてもらえるなら、何でもやっちみるよ。私の仕事は“干物クリエーター”じゃけね」

 

 ◆米水津の丸干しイワシ 丸干しは魚を開かずに天日干しや機械で乾燥させた干物。旧米水津村の一村一品。最盛期は地元の水揚げだけでは原料が足りず、業者は暖流に乗って北上するイワシを追い掛け、全国の港で直接買い付けた。通年生産が可能になり、日本一の生産量を誇った。

 


 次は:佐藤公紀さんのシイタケ


=2017/01/07付 =

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