「知らない人でも話しちゃう」番台に座る女子大生が実感する温泉の“効能” 大分県

 かつて商店や旅館などでにぎわった別府市楠町地区。その一角に大正ロマンをにおわせるレトロな2階建ての寿温泉がある。入り口を開けると「こんにちは」。弾んだ声の主は、立命館アジア太平洋大(同市、APU)4年の北島沙彩さん(22)だ。

 今年1月から番台業務を請け負うNPO法人「別府八湯温泉道名人会」(同市)から依頼され、多いときには週6回ほど、番台部屋に座る。利用客はほとんどが顔見知り。お菓子やせんべい、おにぎりをもらうことも少なくない。「帰り際、玄関口に座り込んだおばあちゃんと話し込み、気付いたら1時間もたっていたこともあります」。湯冷めしないかと気遣いながらも、ついついおしゃべりに引き込まれてしまう。

 「温泉って、知らない人でも話しちゃうじゃないですか。それも大学の同級生とでは絶対にしないような話ばかり。それが楽しくって。もう別府が好き過ぎて困っちゃっています」

 「一日人としゃべらないでも過ごせる」という東京都の出身。高校生時代、鹿児島県・口永良部島にホームステイして、住民同士が協力しながら生活していることに面食らった。「東京のおかしさに気付いた」。APUを選んだのも、地方なら人の触れ合いが残っていると考えたからだ。

 「人がつながることってとっても幸せですよね」。北島さんは今、就職活動の真っ最中だ。将来は人と人をつなぎ、そこから何かを生み出せるIT関連や人材派遣、コンサルタントなどの仕事を目指す。ひとたび温泉に漬かれば、知らない者同士が長年の友だったかのように話してしまう。人間関係が希薄な社会の中で、その温泉の「効能」を生かしたい-。わずか2畳ほどの番台部屋で、その思いを強くしている。

この記事は2017年03月09日付で、内容は当時のものです。

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