【こんにちは!あかちゃん 第8部】「産後うつ」と向き合う<5完>「産前」も見落とさないで

産後だけでなく、妊娠中も精神的な負担がかかる 拡大

産後だけでなく、妊娠中も精神的な負担がかかる

 これまで「産後」について取り上げてきたが、妊娠6カ月である担当記者の私(34)は「産前」の今まさに、心の不安や体の不調と向き合いながら日々を送っている。その中で実感するのは、産後でさえ手薄な現状で、産前のケアはもっと見落とされている-ということだった。どうやって乗り越えればいいのか、経験者や専門家に話を聞いた。

 「誰にも受け止めてもらえなくて…」。佐賀県内で看護師として働く女性(37)は、第1子を出産後から第2子の妊娠中まで、ずっとつらかったという。

 1人目の妊娠中は順調だったが、出産後は初めての育児に戸惑い、心身ともに疲れ切った。引きずったまま2人目を妊娠。つわりが長引き、体が思うように動かせない。イライラが募り、甘えてくる上の子を怒ってしまうこともあった。

 夫は話を聞いてくれるものの、仕事が多忙で時間が限られた。実家からは「誰だって乗り越えたこと」と突き放される。「『そのままでいい。頑張ってるね』と太鼓判を押してくれるような一言が欲しかった」。結局、ぎりぎりのところで何とか自力で乗り切り、出産にたどり着いた。

 福岡市で夫と2人の子どもと暮らす会社員の吉村美香さん(33)は、第1子の長男を妊娠中、心身ともに不安定になった。

 23歳で結婚。翌年、おなかに長男を授かった。「まだ信じられない」という気持ちのまま、重いつわりが始まる。体調が優れないときは仕事を休ませてもらいながら、妊娠5カ月の安定期までこぎ着けた。

 ところが今度は「自分は親になれるのか」「子どもを愛せるのか」という不安が頭をもたげてくる。10代から摂食障害に苦しんできたこともあり、時々お菓子を食べ過ぎて自己嫌悪に陥ったりもした。職場や家の外で気を張っていた分、家では毎日泣いた。

 支えは夫だった。仕事中でもまめに連絡して体調を気遣い、夜は不安な思いを聞いてくれた。「一人では耐えられなかった。妊娠中は苦しかったけど、不安になることも、親になるために必要だったのかな」。無事に出産した今だから、そう思えるのかもしれない。

 「妊娠中はホルモンバランスが変わるので、ただでさえ不安定になりやすい。だからこそ家族や職場など周囲の人は、妊娠中の女性には不安があるということを理解してほしい」。福岡県行橋市の内田産婦人科医院の助産師、内田美智子さん(56)はそう話す。

 例えば、健診の日程や結果を気に掛けてあげる▽頻繁にため息をつく、笑顔がないといった変化に気を配る▽子どもを産むことについて不安を口にしたら、具体的に聞き、必要なら専門家につなぐ▽頑張って食事や生活習慣を気遣っていることを褒めてあげる-。

 「無関心が一番駄目。不安や大変さを『分かっているんだよ』と伝えるのも大切です。妊婦は支えられていると感じて頑張れます」

 一方で妊婦は、体はもちろん、仕事や家庭、経済面などで心配があれば、健診のたびに医師に聞いたりして早めに解消すること。外食に出掛けるなど気分転換も必要だという。内田さんは「命が宿るのは、心と体が健康な証拠。あまり特別な意識をせず、不安があって当たり前と思って過ごしてほしい」と助言する。

 産前の公的支援には妊婦健診料の助成があるが、精神面でのサポートは少ない。私自身は夫、そして「同じ経験をした人」に話を聞いてもらい、言葉を掛けてもらって不安を和らげることができている。裏返せば「当事者」以外の関心が低いということ。望む人が産みやく育てやすい社会環境が整わない一因は、そこにあると実感する。

 そしてもちろん、私自身の覚悟も必要だ。この連載を通して考えたことを胸に刻み、出産を迎えたい。

 =おわり


=2013/08/10付 西日本新聞朝刊=

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