交易、祭祀 手付かずの国宝 沖ノ島 世界遺産勧告 「神の島」保護 手探り

 世界文化遺産登録が勧告された福岡県の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、厳格な上陸制限により、古代の祭祀(さいし)の遺産や信仰を守り継いできた。世界遺産候補として知名度が高くなるにつれ、関係者は沖ノ島への接近や無断上陸の懸念を強めている。「観光地」にできない遺産を保護するために、新たな手だてが必要だ。

 「沖ノ島から何キロまで近づいていいか」。世界遺産の国内候補に決まった昨年以降、島を管理する宗像大社(福岡県宗像市)に旅行会社からの問い合わせが増えている。沖ノ島は宗像大社の私有地。交代で駐在する神職以外の上陸は基本的に認めていないため、せめて船で近づける観光コースにしたいようだ。

 葦津敬之宮司は「神の環境をどうやって守るか。世界遺産に登録されれば、今よりも厳格な管理をしなければならない」と話す。沖ノ島信仰を守ってきた地元の漁師にとっては、島周辺は貴重な漁場でもあり「操業海域に観光目的の船が入ってこないように一定のルールが必要」と訴える。

 福岡県と宗像市、宗像大社、漁業者は昨年末からこの問題を協議し、島への接近は2キロまでとすることでほぼ合意した。だが、2キロ以内に入った船を取り締まる法律や条例はない。「これより中に入らないでと、お願いするほかない」(宗像市世界遺産登録推進室)のが現状だ。

 島の2キロ外側からの「洋上参拝」については、許可制とする案が出たが、どこが許可をするかは明確になっていない。

 手付かずの環境を目当てに、沖ノ島へ行くレジャー客もいる。釣り人を運ぶ遊漁船のほか、最近はダイバーを乗せた船の接岸が確認された。県などでつくる世界遺産推進会議は昨年度、無断上陸を監視するために防犯カメラ2台を島に設置したが、抑止効果は小さい。

 「人が立ち入ることができないからこそ、唯一無二の価値が守られてきた。そのことを粘り強く訴えるしかない」と宗像市の谷井博美市長。7月に正式登録が決まるまでに、ルール作りを急ぐ考えだ。

この記事は2017年05月06日付で、内容は当時のものです。

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