南十字星 見えた喜び 天山からガクルックスを撮った 古川 隆徳さん(50) 佐賀県

 「南十字星」にはロマンをかきたてられる響きがある。十字の頂点から時計回りにガクルックス、デクルックス、アクルックス、ベクルックスの4星。南半球の空に輝き、大航海時代は船乗りの指標だった。全景は北緯26度以南で観測でき、日本でも沖縄県の石垣島などで見えるが、北部九州からは難しい。武雄市山内町の佐賀天文協会員の古川隆徳さん(50)は、その4星の一つを写真に収めた。

 2月3日、小城市の天山8合目から、ガクルックスの撮影に成功した。

 協会の副島勉事務局長によると、南の地平線ぎりぎりに見えるガクルックスを大分県のくじゅう連山や愛媛県の石鎚山で撮影した例はある。だが「天山での成功は九州最北端記録ではないか。まさに快挙」とたたえる。

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 「憧れの星座。難しいからこそ、挑戦しようと思った」と古川さん。地平線近くの星の撮影は高い場所から見下ろすように狙うが、街の明かりや山、島に遮られることが多い。観測地点は星の動きを予測し、天山(1046メートル)の8合目駐車場に定めた。

 天気図を見て、空気が乾燥し、透明度が高い日を選んだ。普段は見えにくい地平線近くの星も大気の影響で光が屈折し、まれに観察できることがあるという。

 初挑戦は昨年3月。入念に準備して臨んだが、かすみに阻まれた。そして2月の再挑戦。未明に望遠鏡を据えて午前3時半ごろ、雲仙岳と多良岳の間に赤くチカチカと光る星を見つけた。星図と照合しガクルックスと確認。興奮を抑えて、慎重にデジタルカメラのシャッターを切った。古川さんは「このときの喜びは忘れられない」と語る。

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 天空に興味を持ったのは高校生の時。理科の教諭が見せてくれた天の川の写真に「自分もこんな写真を撮りたい」と心を奪われた。

 有田町の有田窯業大学校を卒業後、陶磁器製造の仕事の傍ら観測を続けた。反射式望遠鏡を自作し、月や太陽、木星も観察したこともある。

 近年は武雄や有明海などの風景と星空を一つの画面に収めて、宇宙と地球の壮大なスケールを感じさせる写真も撮影している。

 「望遠鏡やカメラで肉眼では見えない世界が見えた時の喜び、楽しさは言葉に尽くせない。撮れた時は本当にうれしい。私たちの周りには美しい景色が広がっている」

 8月には米国で皆既日食の観測も計画している。「天気次第ですけどね」。少年のような笑顔を見せた。

この記事は2017年05月01日付で、内容は当時のものです。

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