「やさしいNIE」 全国大会リポート<下>難しい内容 背伸びも必要 遊び取り入れ継続を工夫

 新聞を活用した学習「NIE」(Newspaper in Education)を、誰でも、無理なく、楽しく学べるようにするには、どんな取り組みが求められているのか-。

 静岡県で7月末にあったNIE全国大会。全体会のパネル討論では例年、専門家が語り合うが、今回は初めて、小中高校生が登壇。教師、保護者を含めた計6人で意見を交わした。子どもの目線から活動を再考する狙いがある。

 「スマートフォン(多機能携帯電話)も広がり、新聞のどんな点が優れているか、同級生の多くが実感できていない」(新聞部部長の高校生女子)

 「図書室に子ども新聞が置いてあるが、読んでいる人を見たことがない」(気に入った記事のスクラップを続ける小学生男子)

 活字離れが進む中、子どもたちと新聞の隔たりが浮かぶ。教師からも「『一般的に』といった普通の言葉も、小学生には難しい」「どの単元で使おうか悩むうちにニュースの旬を逃す」。指導する側も悩む。

 ある中学校の女性教諭の発言が耳に残った。

 「記事の内容が難しいからといって排除するのではなく、その手助けが大切」

 ☆ ☆

 学習院大学の佐藤学教授(教育方法学)の言葉を思い出す。「分からないことを分かろうとする、背伸びとジャンプこそが学びの瞬間である」

 佐藤教授は、生徒と教師ばかりでなく、生徒同士、教師同士を含め縦横、斜めの学び合いの関係を築く「学びの共同体」づくりを提唱する。新聞は、そんな学びの可能性を子どもたちに提供する「もう一つの教科書」なのかもしれない。

 会場で討論を聞いていた武蔵大学の田中祐児・非常勤講師(社会科教育方法論)はかつて、高校で政治経済を教えていた。そこで毎日の出来事に目を向けてもらおうと、生徒たちに出した宿題が「新聞一面トップニュースを100日連続切り抜き、コメントを付けよう」だった。

 「前半の50日、生徒たちの多くはブツブツ言いながら、宿題としてこなしている。しかし、やがて記事に繰り返し出てくる言葉に気づく。そして、物事を知ることのうれしさ、世の中の動きに反応している自分に気づく」

 スクラップには落書き帳を使ったが、100日を終えると「もう一冊ください」と言ってくる生徒がいた。好きな料理や将棋の記事の切り抜きを始める生徒も現れた。

 生徒たちの背伸びとジャンプには、「継続」という入り口もあることを物語っている。

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 静岡県浜松市立有玉(ありたま)小学校の教諭は、「学び上手は聴き上手」との視点に立ち、NIE活動への取り組みを発表した。

 同校では「自分の考えを持つばかりでなく、友達の考えや立場の違いにも目を向けよう」と、「聴き合う関係づくり」に取り組んでおり、NIEを通じて、その裾野をさらに広げようとする試み。

 児童たちは自分で選んだ記事を題材に、朝の会や帰りの会で1分間スピーチ。記事を選んだ理由について、当初は「何となく」といった言葉が目立ったが、その理由は徐々に具体的になり、思いが込められ、疑問点やより大きなテーマへの関心を示す言葉も見られるようになった。聴き合うことで、視点は広がり、深まっていく。

 新聞を活用したクイズも、児童たちの人気を集めているという。図書館入り口に問題用紙を並べ、参加回数に応じてポイントを付け、「関脇」「大関」「横綱」などと格付けすると、参加者が増えた。学級、学年の垣根がない、図書館という共有空間、遊び心も活用しながら、新聞と子どもたちの隔たりを縮めているようだった。

 =「上」は7月30日掲載


=2013/08/13付 西日本新聞朝刊=

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