雪解け水が育む理想の味 廿日市市吉和地域のワサビ 「水の恵み」列島フォトリレー

 ひんやりとした空気が心地よい林道を車で約20分。山奥の幅1メートルもない渓流沿いに青々としたワサビ田が広がる。広島県廿日市(はつかいち)市吉和(よしわ)地域は水ワサビの名産地。口にした瞬間のほのかな甘みと後からツンとくる辛み。香りと粘りがそろった理想のワサビ作りには清流が欠かせない。

 山口、島根両県境近くの冠山(1339メートル)では、ブナの原生林などが蓄えた雪解け水が伏流水となり田を潤す。少量だが絶えず流れてワサビの成長を促す。水量と水温は一年中ほとんど変わらない。10~15度の冷水に漬かったワサビは深い緑色に育つ。

 ワサビ農家を40年続ける「植本わさび本舗」の植本直樹さん(60)は水がよどまないよう田の底の石積みを並べ替えたり、落ち葉や倒木を取り除いたりと小まめな見回りを続ける。

 肥料や農薬は使えない。植本さんは「水が全て」と収穫までの約2年間、そばでじっと成長を待ち続ける。「せせらぎの音でワサビは育つ。最高の自然食材です」と胸を張った。
(写真と文・井上貴博=中国新聞)

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 西日本新聞と友好紙による列島フォトリレー。生活に密着した水をテーマに、各地の「水の恵み」を紹介します。

 2017/06/10付 西日本新聞夕刊

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