歩いて「心の距離」縮む? 夫婦でウオーキング 「地域へ一歩」きっかけにも

季節の移ろいを感じながらウオーキングを楽しむ夫婦=福岡市中央区の大濠公園 拡大

季節の移ろいを感じながらウオーキングを楽しむ夫婦=福岡市中央区の大濠公園

 ■新訳男女 語り合おう■
 
 国民の3人に1人が楽しむ最も身近な運動「ウオーキング」。街や公園では、夫婦そろって歩く姿をよく見掛ける。健康づくりはもちろん、一緒に汗を流すことで「心の距離を縮められる」と精神面の効果を指摘する専門家も。ウオーキングが夫婦関係のかすがいになっている?

 暑さが和らいだ午後7時。福岡市中央区の大濠公園はスポーツウエア姿であふれていた。黙々と走る人、話をしながら歩く女性同士や男女もいる。

 今春まで会社勤めをしていた女性(64)は、同じ時期に退職した夫(66)の足が弱ってきたのを感じてウオーキングを始めた。「池を見て『亀がたくさんいるね』とか、たわいもない会話をするのが楽しい」。お互いに仕事があって趣味も違い、以前は一緒に過ごす時間は少なかったという。

 “現役”の共働き夫婦の姿も。会社員男性(43)は公園近くに引っ越した5~6年前から、ほぼ毎日ウオーキングをしている。この日は会社員の妻(42)も一緒。2人で歩くときは「私が仕事の愚痴をこぼすことが多いですね。でも聞き流しているみたい」と妻は笑う。夫は「半分は聞いている。食事中だと食べ物がおいしくなくなるし疲れるけど、歩きながらならいいコミュニケーションになりますよ」と話していた。

 カウンセラーの田中幸治さん(48)=福岡市中央区=は、歩きながら相談に応じる「ウオーキングカウンセリング」を実践する。相談者の多くは45~50分ほど歩くうちに表情や声のトーンが明るくなり、話す内容も室内カウンセリングより早く前向きに変化するという。ウオーキングなどの有酸素性運動はストレス解消や気分転換の効果があり、これが夫婦で歩いたとき、相手への満足感にもつながるとみられる。

 多くの夫婦問題に接する田中さんは、5年間の海外滞在経験も踏まえて「日本人男性は『非日常』の演出力がなく、妻を女性として扱えていない。そこに不満を募らせる女性が目立つ」と分析する。

 非日常とは、新たな発見があること。女性が髪形やメークを変えたり、食事に誘ったりするのも演出の一つだが、気づかない男性は多い。「ウオーキングなら同じ道でも季節ごとに景色が変わる。コースを変えればもっと非日常を感じられ、妻の日ごろの不満を和らげることができます」

 だが、相手を思いやる心がなければ逆効果。「歩くのが遅い」「少しは合わせてくれても」とけんかになる夫婦もいる。九州大学教授の熊谷秋三さん(健康・運動疫学)は「一緒に運動する夫婦の距離感には信頼関係が反映される。足並みがそろう夫婦は普段から仲がいい。逆に、運動する中で相手を気遣い、目標や価値観を近づけていけば、精神的な絆も深まっていくだろう」と話す。

 さらに熊谷さんは「定年退職した男性こそ夫婦でウオーキングをしてほしい」と提案する。今の60代は仕事一筋で地域と関わってこなった男性も少なくない。一方で妻は独自の人脈を築いており「妻を通じて住民と顔見知りになるなど“地域デビュー”のチャンス。女性側も夫を積極的に地域へ引っ張り出して」とアドバイスした。

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 ●3カ月間継続で体重平均1.2キロ減 ネット上のイベント

 福岡市はウオーキングによる健康づくりを推進するためインターネットのウェブサイト「福岡市ウォーキング」で歩き方のポイントや地域のコース図を紹介している。

 歩くペースは「ややきつい」と感じる程度で、1日20分間以上が目安。体調に応じて無理をせず、病気があれば医師に相談しよう。サイズの合った靴、通気性のよい服装、飲み物やタオルも忘れずに。歩く前後のストレッチ体操はけがを予防し、疲労回復を促す。3カ月間の歩数を競うネット上のイベントでは、登録した市民約150人が1日平均で約1万歩歩き、体重1・2キロ減の効果があった。

 市健康増進課は「歩いて地域を再発見し、顔なじみの輪を広げられる。子どもたちの通学時間に合わせて歩けば防犯にもなります」と魅力をアピールする。

=2013/08/17付 西日本新聞朝刊=

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