入退院支援、葬儀、家財処分… 家族の代わりに「終活」 福岡市社協が見守り事業 無縁社会?増える登録者

福岡市社協職員とのおしゃべりを楽しむ田川とみ子さん 拡大

福岡市社協職員とのおしゃべりを楽しむ田川とみ子さん

 死後の葬儀や家財処分を頼める人がいない…。独居高齢者の不安を和らげようと、福岡市社会福祉協議会が親族に代わって生前の見守りから死後の多様な手続きまでを請け負う「ずーっとあんしん安らか事業」が注目を集めている。無縁社会や人生の最期に向けて準備する「終活」ブームを反映してか、事業の登録者は年々増加。協力企業も広がっている。

 「博多座の歌舞伎、どうでした?」「市川中車さんがよかったわ」-。8月の午後、福岡市城南区の団地に住む田川とみ子さん(86)と、市社協職員の城谷史子さん(54)のおしゃべりに花が咲いた。城谷さんは1人暮らしの田川さん宅を3カ月に1回訪問。2時間近く会話しながら、生活ぶりや健康状態に変化がないかを見守る。

 独身の田川さんは1年前、安らか事業に登録した。福岡県三潴町(現久留米市)出身で、10人きょうだいの末っ子。きょうだいは全員亡くなった。故郷に親戚は多いが「めいたちに迷惑を掛けたくない」と話す。

 火葬だけして、遺骨はめいに引き渡す。介護保険や年金、公共料金などの死後手続き、自宅の家財処分を任せる-。社協とこんな契約を結んだ。「安心しました。最期まで自立した生き方を貫きたい」と田川さん。

 安らか事業は2011年6月に開始。サービス内容は(1)定期訪問など日常の見守り(2)預金通帳など重要書類の預かり(3)入退院の支援-。亡くなった場合は葬儀・納骨や家財処分を行う。登録時に希望の葬儀・納骨の方法、通知先などを伝えておく。

 入会金(1万5千円)と年会費(1万円)を払うほか、葬儀費用など(50万円~)と家財処分費用(業者の見積額)を預託金として預ける。入退院時の付き添い(4千円)、入院時の緊急連絡先指定(500円)、書類預かり(年3千円)などは、サービスに応じて利用料を支払う。定期訪問などの見守りは無料だ。

 登録条件は福岡市在住の65歳以上で、親族が近くにいない人。登録後に認知症などになった場合は社協が成年後見人となってサービスを継続する。

 全国の社協で同様の事業を実施するのは、東京の足立区と府中市のみ。福岡市では現在、約100人が登録。月に3~4件の新規申し込みがあり、ほぼ毎日相談が寄せられる。子どもなどの親族がいながら登録する人も多いという。

 ただ、社協の独自事業で行政の補助金はなく、事業費が不足しがちだ。そこで社協は企業などに応援寄付を呼び掛けている。

 福岡市中央区の不動産業「美住(びじゅう)」は8月上旬、福祉関係者からの相談による賃貸借契約仲介1件につき、500円を寄付することを決めた。美住で扱う契約件数の約7割が高齢者。社長の広瀬美和さん(39)は「病気や死亡時を心配して高齢者を敬遠する賃貸住宅は多い。この事業があれば高齢者も不動産関係者も安心できる」と期待する。

 今年に入って、福岡市の葬祭業者が葬儀1件につき200円の寄付を申し出るなど、企業の協力は広がりつつある。

 10年国勢調査によると、全国の65歳以上の独居高齢者は約480万人で、30年前の約5・5倍。今後は離婚や独身者の増加で、さらに増える見込みだ。

 安らか事業を担当する福岡市社協の吉武ゆかりさん(52)は「親族や地域の付き合いが希薄化する一方、自らの死に備え、他人に頼るのは前向きなことという考え方が浸透してきた。潜在的な需要は大きく、今後もニーズは高まっていくだろう」と話している。

=2013/08/22付 西日本新聞朝刊=

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