昔々ある村で…「紙芝居で学ぶ法教育」 公益、平等、ルールとは 出前授業 子どもに人気

志免東小学校であった紙芝居を使った法教育授業。司法書士の語りに、子どもたちは引き込まれていく 拡大

志免東小学校であった紙芝居を使った法教育授業。司法書士の語りに、子どもたちは引き込まれていく

 ●教材として作成 福岡県司法書士会
 
 紙芝居を使った法教育の出前授業が、子どもたちの人気を集めている。法律の意義や役割を考える法教育が、新学習指導要領に盛り込まれたのを機に、福岡県司法書士会が昨年、独自に教材として作成。司法書士たちが学校に出向き、指導に当たっている。子どもたちは、日本昔話風の物語に引き込まれ、楽しく学びを深めている。

 この夏休み、福岡県志免町の志免東小学校でも、司法書士が講師を務め、特別授業があった。小学校高学年以上を対象にした教材だが、この日は全学年から約30人が参加した。

 紙芝居は、昔々のある村にタイムスリップ。村人の人望を集めていた村長がある日、川橋のたもとに〈この橋、馬は渡るべからず〉とする立て看板を設置し、波紋を広げる。

 そこで第1問。〈馬、牛、子馬、人間の場合、橋を渡れるかどうか? ○×を付けてみよう〉

 子どもたちは、配布された作業プリントに○×を付けてゆくが、回答はばらつく。文字通り「馬」だけに×、「馬」「子馬」に×、「馬」「牛」に×を付ける回答も見られた。

 さらに問う。〈どうしてそう考えたの?〉

 「馬がダメだから、子馬もダメ」「人より重たく、暴れる牛馬は橋を壊してしまう」「ふんをして橋や川を汚すから」

 子どもなりの多彩な解釈が出たところで〈もう一度、○×を付けてみよう〉。すると子どもたちの回答も変わってくる。

 教材づくりに関わった司法書士の金(かね)源(もと)成(しげ)大(とも)さん(37)は「単なる言葉の対応ではなく、このルールはなぜできたのか、立法趣旨を考えてもらいたかった」。

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 悩んだ村人たちは、村長の家に出向く。すると村長は数日前に亡くなっており、妻がその経緯を語る。

 「夫は、私の将来を考え、峠に茶店を建ててくれていた。馬の川橋通行を禁ずることで、村人たちが峠を越え、茶店を利用するよう計らってくれた」

 少々突飛な展開に、戸惑いを隠せない子どもたちに問い掛ける。

 〈では、この決まりは、良い決まり、悪い決まり? その理由は?〉

 私には意外だったが、「良い決まり」と回答した子どもが目立った。その理由は「妻への思いやりがある」「村人が選んだ村長が決めたことだから」など。この回答、中高校生と大人に近づくにつれ、「悪い決まり」とする回答が増える傾向にあるという。

 「公益」「平等」「そもそも橋は何のため、誰のためにあるのか」。そんな物差しを当てはめると、回答は変わってくる。

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 法教育をめぐり、福岡県司法書士会では5年ほど前から議論を始めた。

 「法律で暮らしをどう守るか。これまでの法教育は、消費者保護の視点が中心だった。そもそもルールとは何か、もっと根本から問い掛ける必要があるのではないか」

 「法律は、予期しない事情や現実と隣り合わせ。だからこそ、法律の意味を解釈し、相談し、提案する力が求められている」

 手作りの教材はこうした議論を重ね、誕生したという。紙芝居は、評価が分かれる決まりをめぐり、村人たちが話し合いを始める場面で終わる。

 最後の質問は〈この決まり、○と×、どのくらい○、どのくらい×なのだろう?〉だった。

 この日、指導に当たっていた中山浩一さん(32)は「同じ○だから、同じ×だから、距離が近いだろうか。○と×、答えは違っても、実は考え方が近い人たちもいるよね」。一つのルールを挟んで、主張は違っても、分かり合う大切さを伝え、授業は結ばれた。

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【ワードBOX】法教育

 憲法の条文や判例を覚えるのではなく、法律の意味や背景にある考え方を学ぶ。2011年度から小中高校に順次導入されている新学習指導要領に基づき、学校現場で浸透している。小学校では「社会生活を営む上で大切な法や決まり」、中学校では「契約の重要性」「法に基づく公正な裁判の保障」「裁判員裁判」、高校では「法の支配と法や規範の意義、役割」「司法制度のあり方」などを学ぶ。

=2013/08/27付 西日本新聞朝刊=

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