ホスピス・在宅ケア 長崎市で全国大会 地域連携 納得の最期を 「あるがままの生」支えて

各地の実践事例が報告されたシンポジウム 拡大

各地の実践事例が報告されたシンポジウム

 終末期医療とケア、在宅サービスなどの課題を、医療や福祉の関係者、患者、市民らが学び合う「日本ホスピス・在宅ケア研究会」(神戸市)。7月には長崎市で全国大会が開かれ、在宅医療・福祉を担う地域のネットワークをテーマに、長崎の実践や各地の先進的な取り組みが紹介された。6日と7日にあった大会の様子を報告する。

 6日は連続シンポジウムを開催。第1部で多職種が連携する「長崎方式」の取り組みを全国に発信した。

 坂の町・長崎では往診が大変だが「病院から自宅に戻られない患者を出したくない」と志した開業医が連携。「長崎在宅Dr.ネット」を2003年に設立し、主治医とバックアップ役の副主治医が2人1組で24時間365日の安心を支え、自宅死率は約50%と高い。

 その活動を側面支援するのが「長崎薬剤師在宅医療研究会(P-ネット)」。薬局の薬剤師が自宅を訪ねて薬の管理指導を担う。長崎市訪問看護ステーション連絡協議会が08年に設けた「ナースネット長崎」も情報提供など多様に活動。病院間で電子カルテを共有し、離島支援も視野に入れる「NPO法人長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会(あじさいネット)」などもある。

 Dr.ネットの広がりについて、白髭豊医師は「熱心な医師が関心を抱く医師に声を掛け、場合によっては同行して技術を伝えるなど、根気強く取り組み、少しずつ参加を増やしている」と説明。藤井卓医師は「病院から自宅に帰れば医療に見捨てられた気がしたかもしれないが、在宅医療のメニューを示せばきちんと選べる。その時々に一番いい選択が大事で『必ず在宅』ではない」と話した。患者を見送った後に家族が「そいで(それで)よかった」と納得できるよう、あるがままに生きる支援を連携して行う重要性が示された。

 第2部では、全国で活動する人たちが登壇。病院でも福祉施設でも受け入れられない人の生活を制度の枠にとらわれずに支える宮崎市のNPO法人ホームホスピス宮崎の市原美穂理事長らが取り組みを報告した。

 ●「喪失の悲しみ 話して癒やす」 グリーフケア部会

 大会では、8会場に分かれて介護福祉、看護などさまざまな部会が開かれた。そのうちグリーフケア部会の様子を紹介する。

 グリーフケアとは、遺族の深い悲しみを癒やすこと。部会ではまず、ある遺族会を支援する広島大学の浅利宙(ひろし)准教授(社会学)がグリーフケアの意義や課題を報告。「悲嘆の気持ちを遺族会で打ち明け、いろんな出来事を振り返ることで少しずつ心が整理されていく。そのうち、支えられると同時に同じ境遇の人を支える姿勢が生まれてくる。遺族が相互に支え合う意義をもっと浸透させる必要がある」と指摘した。

 部会には遺族、訪問看護師、ケアマネジャー、僧侶など約60人が参加。6班に分かれ体験を話し合った。

 この中で、夫をがんで亡くした訪問看護師の女性は「看護師なのになぜ気づかなかったの、という言葉が胸に突き刺さり、自分を責めてうつ病になった。周囲の支えで社会復帰したが、みんな気を遣い、夫の話は一切しない。本当は思い出話を聞いてほしいのに…。悲しみを分かち合う場がもっと欲しい」と訴えた。

 座長を務めた大町由里さん(看護師)は「まずは家族同士や近所同士で思い出を話すことが大切。若い世代にも肉親を喪失した悲しみの深さ、命の尊さを伝えていきたい」と総括した。

 ●「物語つくるケアを」 柳田邦男さん 特別発言

 大会では、作家の柳田邦男さんが特別発言をした。要旨は次の通り。

   ×    ×

 団塊世代が高齢化し、死者数が急増している。15年後に年間160万人を超えるのは確実で、高齢者や死にゆく人をどこでケアし、みとるか課題だ。(シンポジウムで報告された)取り組みは、みな個性的。地域の成り立ちや取り組む人の個性、関連職種との連携で違ってくる。無理に一般化する必要はない。

 在宅・ホスピスケアには宗教心が問われてくる。特定の宗教ではなく、心の奥にある宗教心で、人知が及ばないとても大事なものだ。宮城県で在宅・ホスピスケアに取り組んだ医師は、東日本大震災後に「宗教心を持たないと被災者や患者と向き合えないと痛感した」と語った。医療者は宗教家の力を借りないと死と向き合えない、今後どう向き合うか課題だ、と。

 人は物語を生きている。個性的な人生を送り、死を迎える。ケアする側も個性を持ち、物語をつくる。さまざまな場面で、出会い、別れ、出来事があり、人生の物語を構成する。ケアの言葉や行為は小さくとも、相手の人生の文脈で意味を持つ。人が人に関わるのは本質的にそんなことではなかろうか。

=2013/08/29付 西日本新聞朝刊=

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