【こんにちは!あかちゃん 第9部】核家族化の裏側で<1>実家の支えに左右され

 《大事な会議の前夜はいつも不安になり、熟睡する子どもの額にそっと手をあてる。「お願いだから熱を出しませんように」》

 福岡県内の会社に勤める佐恵さん(36)は夫(36)と息子(7)の3人で暮らす核家族。互いの実家の両親は現役で働いており、孫の面倒まで手が回らない。夫婦だけで育児と仕事に精いっぱいの日々が続く。

 息子が保育所のころは、急な発熱で度々仕事を抜けた。会社で不利益を被ることはなかったが、申し訳なさはぬぐえなかった。夫とは先に帰った方が家事をするルールで、残業は交代で何とかやりくりしてきた。

 一人で遊ぶ息子を見るたびに、妹か弟をつくってあげたいと思う。半面、風邪をうつし合ったら、職場に迷惑をかけたらと考えてしまう。2人目を産むタイミングを見失っているうちに、気付けば高齢出産といわれる年齢を迎えていた。

 息子が小学生になれば余裕が出るかも…。だが、未就学児が対象だった会社の育児支援制度は使えなくなった。免除されていた休日出勤も回ってくるようになる。「実家という“保険”のある同僚がうらやましい」。今は、勤めの後に孫を預かるのはきついという親に、仕方なく頼っている。

 《求人雑誌を見て電話をしたら10社以上に断られた。ある人事担当者にはこう諭される。「子どものために家にいてあげて」》

 会社員の愛子さん(32)は夫(32)と小学2年の長男(7)、長女(1)の4人家族。夫婦ともに実家は飛行機で行く距離だったこともあり、妊娠を機にそれまで勤めていた会社を辞めた。子どもが2人になり、家計のためにも再就職しようと試みたが、壁が立ちはだかった。ネックは子どもの有無、実家のサポートがあるかどうか、そして母親が働くことへの偏見…。

 自身の両親も共働きだった。近くに祖父母がいたものの、専業農家で大忙し。見かねた近所のおばちゃんがよく預かってくれた。その家にも娘がいて妹のようにかわいがってもらった。

 当時の濃密な人間関係は今の自分にはない。認可外保育施設、ベビーシッターと選択肢は増えても、事前予約といった制約や経済的負担も大きく、臨機応変さに欠けて窮屈な気がする。

 ようやく見つけた再就職先。でも夫は「家事、育児に支障のない範囲で」とくぎを刺す。当事者意識に乏しい夫もさることながら、「子どもの有無以上に、実家のサポートが女性のキャリアを決めているのかもしれない」と痛感する。

 《実家の親が近所に引っ越してきてくれたからこそ今がある。「慣れ親しんだ土地を離れさせた親には申し訳ないけれど…」》

 自営業の由香さん(43)は夫(43)と長男(16)、長女(11)の4人家族。長女の出産と同時に、定年退職した両親を関西から九州に呼び寄せた。

 それまでは10回近く職を転々とした。パートばかりで、それゆえ子どもの病気で休むたびに肩身が狭かった。親同士で預かり合う人もいたが、甘えるのが苦手な性格でもある。「お願い。こっちへ来て」。甘えられるのは両親だけだった。

 娘に呼び寄せられた親としては一大決心だった。母(66)は「年を取ると新しい友達ができないし、不安でした」と振り返る。それでも、働いて社会貢献したいという娘を応援したい一心でやって来たという。

 近くに住み、熱があるときに預かってもらったり、夕飯を食べさせてもらったり、全面的に支えてもらっている。「呼び寄せられたから良かったものの、実家の親に頼らないと思い切り働けない今の社会って…」

 (文中仮名)

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 性別にかかわらず若い世代が働かなければ、社会保障制度は立ちゆかなくなるといわれる。一方で核家族化の時代、地域のつながりは薄れ、公的支援も不十分な現状では、夫婦だけでの子育てに限界もある。核家族化の裏側にあるものを見つめ、これからの少子化対策に生かせることを考えていきたい。

    ×      ×

 ●メモ=核家族が60%に

 1950年代半ばは6人以上の大家族が約3分の1を占めていたが、高度経済成長が進むにつれ、核家族の象徴ともいえる4人世帯が急増する。反比例して6人以上は減少した。昨年の国民生活基礎調査によると「夫婦のみ」「夫婦と未婚の子」「ひとり親と未婚の子」からなる核家族の割合は全体の約60%に上る。近年は未婚、晩婚化の影響で1~2人世帯も増えている。


=2013/09/03付 西日本新聞朝刊=

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