【こんにちは!あかちゃん 第9部】核家族化の裏側で<5完>理想像の呪縛いまだに

 ●福岡大学教授 星乃治彦さんに聞く
 
 3日付から連載してきた「こんにちは!あかちゃん」第9部では、核家族化の中で、親に頼れず子育てに悩む人、親世代との家族観や結婚観の違いに葛藤する人たちの声を紹介してきました。そうした悩みや葛藤の根底にあるものは? 連載の最後に、ジェンダー(社会的性差)や家族観に詳しい福岡大学人文学部教授の星乃治彦さん(57)に聞きました。

 -「家族」とは何なのでしょうか。

 「個人によっても、時代や地域でも異なります。それなのに『理想の家族像』に縛られ、そこからはみ出す人が生きにくかったり、幸せではないと見なされたりする風潮があります」

 -理想の家族像とは。

 「バリバリ働くたくましい父親に、かいがいしく家事をする母親、わんぱくな男の子に優しい女の子-といういわゆる“ハッピーファミリー”。普遍的なものではないのに、テレビCMや絵本などによって、幼いころから自然に刷り込まれています。女性を家庭に縛り付け、男女共同参画を阻む要因の一つでしょう」

 -「男は働き、女は家庭を守る」という理想像はいつごろ広がったのですか。

 「浸透したのは、18世紀半ばから始まる産業革命以降。それ以前は、みんなで働かないと生活していけなかったのです。日本では高度経済成長期、企業偏重を背景にした『モーレツ社員』に『良妻賢母』というような家庭像がありました」

 -今後は?

 「長い不況もあって、若い世代を中心に経済力が低下し、夫が妻子を養う旧来の夫婦モデルは崩れてきています。それに事実婚、ひとり親、結婚しないシングル、子どものいない共働き夫婦のDINKS(ディンクス)など多様な選択肢も広がっています」

 -現在は世帯の過半数を核家族が占めています。

 「核家族は非常にもろいです。以前の大家族と比べ『手』も『目』も少ない。子どもが怒られたときに逃げる祖父母の存在もない。閉鎖的でドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の温床になる可能性もあります」

 「一方で、少子化で一つの世帯の子どもが少なくなった分、過度の期待が向けられています。親の思い通りに育たないと、育児ノイローゼになったりするケースも見受けられます」

 -処方箋はありますか。

 「育児を家庭だけで完結させようとしてはいけません。自治体が公民館を活
用し、近所の異世代が出会う場をつくるのも、新たな人間関係を生み出すきっかけになり得るかもしれません。子どもを中心に、親、祖父母、地域と幾重にも関係が重なるのが理想的です」

 「国の施策も、夫が働いて妻が家庭を守る子ども2人の家族像をモデルとしてきた部分があります。国には今後、家族のバリエーションが多様化していることを前提とした、男女ともに育児と両立できる雇用環境を整えるなど、核家族時代に応じたきめ細かな支援が求められます」 =おわり

    ×      ×

 ●記者ノート=企業も子育ての当事者

 取材を通して女性から「共働きなのに、子育てのために仕事をやりくりするのは、いつも自分」という嘆きを何度も聞いた。子どもが発熱したとき、夫に「自分の風邪でも休まないのに、子どもを理由に休めない」と一蹴された人もいた。

 小さい家族の中で夫に当事者意識がないのは、もってのほか。一方で核家族の時代、連載では夫婦だけの子育てに限界があることにも触れてきた。

 確かに以前に比べ、行政や企業の育児支援制度は整備されつつある。しかし、特に男性の利用が進んでいないのが実情だ。上司の無理解、職場の雰囲気…。雇用環境が厳しい小さい会社などは、そもそも利用させる余裕もない。

 「夫が忙しいから2人目は無理。もっと柔軟な働き方ができたら」との声も多かった。無駄な会議をなくし、情報を共有して仕事の効率を上げるなどして、働き方を根本から見直す必要がある。そのためには企業側の意識改革も欠かせない。特に管理職世代。子育てが一段落した年代だからといって人ごとではない。決定権があるからこそ「子育ての当事者」として考えてもらいたい。


=2013/09/07付 西日本新聞朝刊=

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