【人の縁の物語】<33>「隣のおばちゃん」的存在で 「産前産後」経験者が支援 福岡県久留米市のエンゼル応援隊

体を洗った後、母親と一緒に赤ちゃんをあやす吉田公子さん(左)。「子育ての経験を伝えることでお母さんの不安を少しでも解消できたら」と話す 拡大

体を洗った後、母親と一緒に赤ちゃんをあやす吉田公子さん(左)。「子育ての経験を伝えることでお母さんの不安を少しでも解消できたら」と話す

●寄り添って、会話も大切に 
 幸せを運んでくる赤ちゃん。半面、産前産後の母親には心身ともに負担もかかる。核家族化で実家の援助が難しい中、福岡県久留米市で家事や育児をサポートする事業が行われている。支え役は、子育てを経験した女性たち。地域の縁も薄れる中で「隣のおばちゃん的存在」として寄り添っている。

 「気持ちいいねえ」。台所の流し台に置かれたベビーバスで、吉田公子さん(53)が赤ちゃんの体を慣れた手つきで優しく洗う。傍らでは、母親の児玉陽子さん(35)が目を細めてわが子を見つめていた。

 吉田さんは、久留米市が取り組む「エンゼル支援訪問事業」で「エンゼル応援隊」の一員。母子手帳を交付されてから出産退院後6カ月以内の家庭に、子育て経験者が訪問する事業で、育児援助のほか、料理や買い物といった家事援助も行う。料金は1時間500円。

 同様の事業は九州でも熊本市などで取り組まれており、久留米市は2004年度から実施。核家族化を背景に、利用者数は年々増えている。

 児玉さんは今年6月に第1子を出産した。実家の近くに産科が少なく、里帰り出産をしなかったため「手伝ってくれる人がほしい」と利用を始めた。産後1カ月は1時間おきの授乳で寝不足が続き、初めての育児で戸惑うことばかり。イライラすることも多かった。

 エンゼル応援隊に来てもらう間、ゆっくり眠れるし、泣き方の違いなど子育てのアドバイスも受けられて、気持ちに余裕ができたという。児玉さんは「一人で黙々と世話をしていると、どうしても気がめいる。世間話をするだけでも精神的に楽になって『何とかなる』と思えるんです」と笑顔を見せる。

 エンゼル応援隊の応募資格は保育士か子育てを経験した人。筆記や面接などで選ばれた後、研修を受けて市に登録する。現在は、39~60歳の21人が活動している。

 吉田さんは4人の子を育てた経験を生かしたいと04年に登録した。心掛けているのは「寄り添うこと」。そこで、家事や育児の手伝いだけではなく、会話をすることも大切にしているという。

 かつては近所で子どもを預け合ったりして、地域で子育てをすることができた。今は隣近所のつながりが薄れ、親たちが“孤育て”に陥っているケースが少なくない。

 「子育てに悩んだとき、私たちを『隣のおばちゃん的存在』として気軽に頼ってほしい。お母さんの笑顔を見るのが何よりうれしいから」と吉田さん。そうした思いが活動を支えている。

=2013/09/10付 西日本新聞朝刊=

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