菌ちゃん野菜に熱視線 菌の力で土を元気に 指導者研修に全国から50人 学者も「おいしい理由」研究

「大地といのちの会」の畑で、吉田俊道さん(左)から「菌ちゃん野菜」の栽培法の説明を受ける指導者研修会の参加者=長崎県佐世保市 拡大

「大地といのちの会」の畑で、吉田俊道さん(左)から「菌ちゃん野菜」の栽培法の説明を受ける指導者研修会の参加者=長崎県佐世保市

指導者研修会では全国からの参加者が地元での活動を報告した=長崎県佐世保市

 家庭の生ごみや雑草を土に混ぜ、微生物(菌ちゃん)の力で完全に発酵させた土で野菜を育てる「菌ちゃん野菜作り」が全国的な広がりを見せている。NPO法人「大地といのちの会」(長崎県佐世保市)理事長の吉田俊道さん(54)が提唱して14年。農薬、化学肥料を使わずに病害虫に強く、おいしい野菜ができる。その理由を学術的に立証しようという研究者も出てきた。

 8月下旬、佐世保市潜木町の山あいにある「大地といのちの会」の畑。「こちらのピーマンにはカメムシが付いているでしょう? 大雨で冠水して土が腐敗したからです。水につからなかったピーマンは、土が微生物で浄化されているから虫がつきません」。吉田さんの説明に、全国から集まった「菌ちゃん野菜作り指導者研修会」の受講者がうなずく。「菌ちゃん野菜が元気なのは、微生物が分解した微量ミネラルがバランスよく土に含まれているからだと考えています」と吉田さん。病害虫は元気な野菜を嫌う。農薬や腐敗で微生物が少ない土で育った野菜は病害虫に弱いという。

 研修会は4月からの3回シリーズで初めて開催した。最終回の今回は1泊2日コースに約20人、日帰りコースに約30人が参加。遠くは東京、新潟、長野、愛媛から足を運んだ人もいた。

 家庭の生ごみを活用して発酵型の微生物だらけの土をつくり、最高においしい「菌ちゃん野菜」を育てる-。吉田さんは10年前から各地で講演し、ここ6年では年間200回を超える。

 吉田さんの講演をきっかけに、菌ちゃん野菜作りに取り組む市民団体や保育所が急増。そこで吉田さんは「各地で菌ちゃん野菜作りを教えることができる指導者を育てたい。佐世保の現場を見て学んでほしい」と研修会を思い立った。

 東京都武蔵野市の市民団体「じゃがいもの会」代表の今木仁恵さん(70)は、30軒の住宅から年間2・5トンの生ごみを集め、宅地の畑などで野菜を育てていることを研修会で報告。市民向けの土作り講習もしているという。2年前に吉田さんを講演に招いたことで活動が活発化。今木さんは「研修会では、雑草から堆肥を作る方法をこの目で見られたことが収穫でした。都会でも元気な野菜が作れることを、もっと知らせたい」と張り切る。

 菌ちゃん野菜のパワーは行政も動かしている。新潟市は来年6月に宿泊もできる農業体験施設「アグリパーク」を開設する。パークの畑では、幼稚園児や保育園児を中心に、菌ちゃん野菜作りを体験してもらう。研修会に参加した同市食育・花育センター職員の佐藤克彦さん(36)は「食生活の改善など市の食育方針と、吉田さんの考え方が一致している」と説明する。

 研修会には、菌ちゃん野菜に心を動かされた研究者の姿もあった。

 九州大農学部の比良松道一助教(園芸学)は昨年から、菌ちゃん野菜の味が濃くおいしい理由を研究。菌ちゃん野菜と、化学肥料で育てたニンジンのジュースを学生に飲み比べてもらうと、菌ちゃんが甘く、化学肥料が苦いという回答が圧倒的に多かった。ただ糖度に大きな差はなかった。「どんな成分が味を左右しているのか探りたい」。菌ちゃん野菜が比良松助教の探求心をくすぐる。

 農薬や化学肥料を使わない農法を研究している山梨大の中田美紀准教授(野菜園芸学)は、土壌の炭素と窒素のバランスが重要な要因と仮説を立てる。「経験を生かして実践している吉田さんの農法に興味を持っている。幼児から大人まで身近な生ごみで取り組める点も素晴らしい」

 全国に広がり、研究者の注目も集める「菌ちゃん野菜」。吉田さんは「野菜作りが楽しくなり、おいしいから、ぜひやってみてください」と太鼓判を押す。大地といのちの会=0956(25)2600。

=2013/09/11付 西日本新聞朝刊=

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