対談「『助けて』と言える国へ」出版 奥田知志さん(ホームレス支援) 茂木健一郎さん(脳科学者)

本の出版を記念して対談する茂木健一郎さん(右)と奥田知志さん 拡大

本の出版を記念して対談する茂木健一郎さん(右)と奥田知志さん

14日に開所予定の「抱樸館北九州」

 ●信頼関係挑戦生む 茂木/出会い人生決まる 奥田
 
 生活面で「笑える日が来る 困窮者支援の現場から」(4月4日~8月29日、全22回)を連載した牧師でNPO法人・北九州ホームレス支援機構理事長の奥田知志さんと、脳科学者の茂木健一郎さんとの対談をまとめた「『助けて』と言える国へ」(集英社新書、760円)が出版された。本の収益はすべて支援機構に寄付され、困窮者支援に役立てられる。今月8日に北九州市であった出版記念講演会での二人の対談を紹介する。

 〈二人の出会いは2009年3月に放映されたNHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」。茂木さんが司会の番組に奥田さんがゲスト出演した〉

 茂木 番組で約100人と話し、その場で出版社の編集者に電話したのは2人。一人が奥田さん。もう一人が青森で無農薬リンゴを栽培する木村秋則さんで映画「奇跡のリンゴ」のモデルになった。僕はタレント性を見抜く力がある。奥田さんは傷つき、泥の中ではい回っている。人間はそういう人に心ひかれる。

 奥田 茂木さんは自由な人で、常に挑戦している。だが、現代社会はなかなか挑戦できない。自己責任論は周囲が責任をとらないための理屈。周囲が無責任になれば、自己責任もとれない。例えば、シートベルトもない車では競争できないし、若者は車にさえ乗らない。「競争して多少のことがあっても大丈夫」と言われて初めて挑戦できるし、競争もできる。

 〈タイトル「『助けて』と言える国へ」は、安倍晋三首相の著書「美しい国へ」を意識したという〉

 茂木 奥田さんがホームレス支援という困難な仕事に挑戦できるのは、心に「安全基地」があるから。子どもは母親など保護者に守られている安心感があるから何にでも挑戦する。周囲に「助けて」と言える信頼関係の有無が、人生でチャレンジできるかどうかを決める。

 奥田 もともと私も「助けて」と言えない人間だった。牧師という仕事柄、頑張って人を助けようとしてきた。人間は「助けて」と言って助けられると自尊感情が生まれるが、助けられっぱなしでも駄目。助けられていた人が助ける側になると、がぜん元気になる。助け、助けられるという相互的な関係が必要だ。

 茂木 「勝者は金持ち、敗者はホームレス」という社会になると誰もチャレンジしなくなる。国民がそうなると、国全体もチャレンジできない。安倍首相が掲げる成長戦略と奥田さんの活動は相反するようだが、実はベクトルは違わない。

 〈奥田さんが北九州でホームレス支援を始めて25年。9月には新しい支援拠点が開設し、茂木さんも支援者に名を連ねている〉

 奥田 現代は出会ってもいないのに、出会ってこう言われたらどうしようと逃げるタイミングを計算している。私たちは正直、逃げ遅れた人たちだが、それはすてきなこと。出会いに素直で、出会った責任を何とか果たそうとして、共に生きている。茂木さんも出会った責任を果たしてくれている。

 茂木 人間の脳の容量は150人分のやっかいな人間関係を処理できるとされる。仲間が150人いなければ脳を活用していないということ。そして、仲間が多ければ多いほど、安心して挑戦できる。

 奥田 人生は出会いで決まる。今までの出会い、私自身を振り返っても、人間は原則ひと味足りない。本来の質や素材は違わない。誰と出会うかで、その人間が成立する。私たちも最後のひと味になれるような活動を続けたい。

 ◇北九州ホームレス支援機構=093(571)1009

 ●元ホームレス高齢者に施設 北九州のNPO

 路上生活をしていたお年寄りが暮らす居室を備えた「抱樸館(ほうぼくかん)北九州」が14日、北九州市八幡東区東鉄町に開設される。NPO法人・北九州ホームレス支援機構が建設した。

 鉄骨3階建て。25の居室のほか、路上生活中の人が自立までの半年間入居できる部屋が5室ある。地域で暮らす元ホームレスを対象とした通所介護施設もあり、建設を支援する募金が全国から5400万円寄せられて実現した。

 支援機構によると、路上生活から脱してアパートなどで暮らす人の中には、年を取って1人暮らしが難しくなった例もある。そこで抱樸館で受け入れ、スタッフが見守ることにした。

 17日には施設内に住民が昼食時に利用できるレストランも開業する。支援機構は「誰もが集まる地域に開かれた施設にしたい」としている。

=2013/09/12付 西日本新聞朝刊=

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