精神障害者「人権侵害知って」 NPOが千人調査 病院や地域で偏見

「いわれのない偏見が精神障害者を生きづらくさせている」と分析する全国精神障害者ネットワーク協議会代表の徳山大英さん 拡大

「いわれのない偏見が精神障害者を生きづらくさせている」と分析する全国精神障害者ネットワーク協議会代表の徳山大英さん

 病院でも退院後の生活でも、あらゆる人権侵害を長期に受け続けている-。治療を続ける約千人の精神障害者の切実な声を集約した「サルでも分かる!!精神障害者人権白書」を、福岡県飯塚市のNPO法人・全国精神障害者ネットワーク協議会(ゼンセイネット)が刊行した。「人間扱いされていない精神障害者の現実を少しでも知ってもらいたい」としている。

 ゼンセイネットは九州在住の精神障害者らで組織。2005年から独自調査と報告書刊行を続けてきた。今回は、昨年3月までの数カ月間に、全国800弱の障害者団体などに送付したアンケートから得られた1058件の回答(回収率20・3%)に基づいてまとめた。回答のうち九州7県が41・5%を占める。

 それによると「発病後の経過年数」について、平均値が「19年9カ月」と長期に及んでいた。精神科の入院回数の平均は「4・25回」で、白書は「精神障害を患うと病院で人生を浪費させてしまう」と指摘する。

 入院中に「人権侵害に当たる治療行為を加えた職種」は「看護師」が圧倒的に多かった。「プライバシーの侵害は」の問いに「ベッド横のカーテンがなかった」「人前で着替えないといけない」「郵便物の検閲」などが挙げられた。「電話は自由にかけられたか」の質問に、25・2%が「いいえ」と回答した。

 病院側の対応に納得できない場合、知事にできる処遇改善請求なども、職員から「知らされなかった」が65・9%に上った。

 一方、退院しても人権侵害は終わらない現実も浮かび上がる。「地域生活の中で、人権侵害がある」は19%。「人権侵害を与えている人」は「隣人・地域住民」が過半数。記述式の回答では「入院前は普通の近所付き合いだったが、退院後から無視されたり罵声を浴びせられたりした」「何かあるとすぐに警察を呼ばれる」などと訴えていた。

 そもそも「発症に至った人権侵害を与えた人」は(1)隣人・地域住民(2)父(3)仕事関係者(4)母(5)生徒-の順。「人権侵害から助けてくれた人」の最上位も「家族」で、複雑な実情が浮かび上がる。「助けてくれた人」の2位は「友人」だった。

 精神障害を世間に知らせていない人は32%だった。「本当はオープンにしたいが、知られると人権侵害が発生することが分かっている」「精神障害者の言葉には社会的な信ぴょう性が低く、私たちに人権などありません」。記述式の回答にはこうした嘆きもあった。

 ゼンセイネット代表の徳山大英(おおひで)さん=熊本市=は「隣人が、地域生活での人権侵害のトップになったのには驚いた。いわれのない偏見が精神障害者を生きづらくさせ、再入院、治療の長期化を招いている」と分析している。

 白書は1050円。一部書店でも販売予定。問い合わせはゼンセイネット=0948(25)8939。


=2013/09/13付 西日本新聞朝刊=

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